私がもっと積極的に浜崎さんと接点を持っていけたら良かったのかもしれない。

 けど、ただでさえ接点のない浜崎さんがお店に来た際に状況を見て声をかけるのもハードルが高いのに、学校でいきなり声をかけていくだなんてこと私にはどんなに頑張ってもできそうにない。


「綾乃ちゃーん、こっちにもケーキセット~!」


 そのとき、シルクハットを被った紳士が、その風貌には似合わずにこちらに手を振った。

 彼は話によるとガマガエルのあやかしらしい。


 紳士な姿からカエルの姿はとてもじゃないけど結び付かない。でも元の姿の影響なのか、時々ゲロゲロと笑うので、いろんな意味で見た目とのギャップが酷い。


「はい、今、うかがいます」

 そんな彼は京子さんほどではないけれど、寄り道カフェの常連客の一人らしい。


「あのガマガエル、馴れ馴れしく綾乃を呼んでんじゃないわよ」

 そんな風にぼやく京子さんに向かって思わず口元に人さし指を立てる。


「だって、先週初めて会ったばかりにしては馴れ馴れしいじゃない。しかもいつも週に一度来るか来ないかの頻度のくせに、最近やけに来るじゃない」

「私は大丈夫なので。一旦、失礼しますね」


 どうやら京子さんは、ガマガエルさんのことはあまり好んでいないらしい。

 人間にも合う合わないがあるように、あやかしにも相性というものがあるようだ。


「本日のケーキとホットコーヒーをお持ちしました」

「ああ、ありがとう。綾乃ちゃん、んー、いつ見ても可愛いねぇ」