プロローグ

 深夜、僕は彼女と廃ビルに訪れていた。そこは、いわゆる自殺スポットというやつで、死者の幽霊が出るという噂が沢山あるようなところだった。
 僕達は、そんな廃ビルに肝試し感覚で来ていた。
「真っ暗だね」
「懐中電灯、あるけど」
 鞄から出しながら言った。
「さすが。用意周到」
 スイッチをオンにすると、パッと辺りが明るくなった。そして灯りを頼りに、僕達は屋上を目指した。
「ねえ、本当に幽霊っていると思う?」
「ここまで来ておいて、それ聞く?」
 何のための肝試しだと思っているんだ。
「いたら、友達になれるかな」
「なってどうするんだよ」
「色々話を聞きたいかな」
 そんな話をしているうちに、僕達は屋上に辿り着いた。
「誰もいないね」
「そうだな」
 屋上には、俺達しかいなかった。そりゃそうだ。幽霊なんて、いる訳がないのだから。そんなこと、本当はわかっていたはずだった。なのに、何故か残念な気持ちでいっぱいだった。
「せめて死体の一つでも転がっていたらなあ」
 彼女がつまらなさそうに、そう呟いた。
「いつか死んだら、ここの幽霊になろうかな」
「何言ってんの」
「……冗談だよ」
 本当に冗談なのか、僕にはわからなかった。