【 第七章 】
「な……っ、なんだよ、アレ……っ」
「巨大なモンスターね!?」
と、レミ。
その巨大なモンスターを見上げ、ア然としてこうつぶやいているオレが居た……。
「モン……ド……、ギリ…アス……っ」
「なにっ? なによっ!?」
「モっ、モンド・ギリアスだっ!?」
「ハァ?」
「前に言っていただろ!? オレが幼稚園生の頃に好きだったっていう、戦隊ヒーローに出てきた敵だって……」
「アナタ、まさかっ!?」
ズガガガ――ン! その強力な「超能力」で、岸壁を打ち砕き、砕かれた岩石をコッチに向かって吹き飛ばしてくるモンド・ギリアス。
「キャアッ!」
慌てて、「夢想防御」を張り、何とかソレを弾き返すレミ。
「今、何かそんなコトを想い浮かべたんじゃないでしょうネェっ!?」
「何がだよっ!?」
「この巨大なモンスターは、この人の中の悪い夢の因子の塊《かたまり》!」
「ソレがモンド・ギリアスだってぇのかっ!?」
「違うわよ! アンタが想い浮かべたコトがこの人の意識に投影されてるっていうコトよっ!?」
「ハァ!? 何だァ、そりゃあァっ!?」
「こんなときに余計なコト、想い出しているんじゃないわよっ!?」
「アレは! オレの意識が投影されて現れたモンスターだってぇのかっ!?」
「そうよ! この人の悪い夢の因子はまだ具現化していなかったのにっ、アンタが余計なコトを考えたから「形」に成って現れちゃったのよっ!」
尚も巨大な岩石を突き飛ばしてくるモンド・ギリアス。
ズガガガガガガガ――ァン!
「なんなのよ、もう!」強烈な精神波を張って、なんとかソレをしのいでいるレミ。
「んとに、余計なコトを余計なタイミングで想い出してくれちゃってぇっ!」
「しょっ、しょうがないだろっ!? こっ、コレが他の人の夢の中なのか?って、思ったら、前にオマエに「本当に夢の中で一緒だったっていう証拠を見せてアゲる」って言っていた場面を思い出しちまっていたんだからっ!?」
ガガ――ン! ガガ――ン! ズガガガ――――ァン!、なんと岩石だけに飽き足らず、ミサイルまでコチラに向かい何発も発射してくるモンド・ギリアス! 二人の傍《そば》に着弾し、巨大な火柱が何本も上がっていく……っ。
「何なのよっ! メチャクチャ強いじゃないのよっ! このモンド・ギリアスっていうのォっ!」
「そっ、そうなんだよ! このモンド・ギリアスっていうのはなっ! 基本一話完結で進んでいく戦隊ヒーロー、フィーダーデッドん中で、唯一、二話に渡って登場し主人公達を翻弄したシリーズ最強の敵だったんだよっ!!」
ズガガガガガガ――――ァン! モンド・ギリアスが吹き飛ばす岩石と、何発も絶え間無く発射されるミサイルが、二人に襲い掛かる。
「キャアッ!」急いで、二人を囲うように「夢想防壁」を何とか維持し続けていているレミ。
「なんでっ、よりにもよってそんな「強い敵」なんかを想い浮かべちゃうのよっ!?」
「しょうがネェだろっ! フィーダーデッドを翻弄し嘲笑する、その姿が強烈な印象を残してオレの中ではシリーズ中、最も好きなエピソードだったんだからっ!」
その話を受けて、更に攻撃力が増すモンド・ギリアス! 二人の周《まわ》りに上がる炎と吹き荒れる爆風が勢いを増して行く……。
「だから、余計なコトを想い出すんじゃないって言っているでしょっ!? アソコに居るモンド・ギリアスってのは、アンタの意識の投影なのっ! アンタがアレやコレやと想い出すたんびに、よりリアルに具現化されて行っちゃうのよォっ!!!!」
「そっ、そんなコト、イキナリ今言われたってぇっ!」
吹き荒れる爆風に翻弄され、涙目に成っているオレが言う。
攻撃力を増し、二人に猛然と迫り来るモンド・ギリアス。
「こっ、コレ以上防ぎ切れないし、突進してくるっ! 早くしないと殺られちゃうわよ! アタシ達――っ!? なんか、弱点とか無いのっ!? このモンド・ギリアスってぇのにはっ!?」
「じゃっ、弱点……、そ、そんなコト言われたって、幼稚園の頃のチラッとテレビで観ていた記憶だぞ!? 内容なんて想い出せるワケがっ!!!!」
「だとしたら、アタシ達でココでデッドエンドなんてコトに成っちゃうでしょ!? 早く想い出してっ!!!!」
一人、一生懸命「夢想防壁」を張りながら、手から光を放ち、突進してくるモンド・ギリアスに対しその衝撃力で何とか間合いを保っているレミ、孤軍奮闘、頭が下がる……、何て、想っている場合じゃない! モンド・ギリアスの弱点! ソレを想い出さないとっ!
「ちっ、ちなみにっ! ココでモンド・ギリアスに殺られて死んじまったら、オレ達はどう成るんだっ!? 一応、夢の中なんだろっ!? 此処《ココ》はっ!?」
「そっ、そぅ、だから、ココでアタシ達が死んでも、実際の肉体は死ぬことは無いけど! 潜在意識にその記憶が刷《す》り込まれて、鬱に成ったり、下手すると昏睡状態に陥《おちい》っちゃったりしちゃうのよっ!!!!」
「そっ、ソレで、オマエ……、不登校に……っ!?」
「そういうコトよっ! 前に夢の中でワイリー・フラウの連中との戦いに疲弊《ひへい》しているときに捕《つか》まってヒドイ目に遭ったのが原因で! ソレで、現実社会のアタシは生きる元気を失って毎日を呆然と無気力に送るコトに成って不登校に成っちゃったのよっ!って、そんなのイイから、早くモンド・ギリアスの弱点を想い出して――ぇっ!?」
ガガガ――ァン! ズガガガ――ガガガ――ァン!
徐々に間合いを詰め、超能力で砕いた岩石を吹き飛ばし、更にミサイルを使って猛攻撃を仕掛けてくるモンド・ギリアス!
「やべぇ、マジ強ぇ、さっ、さすがはモンド・ギリアス!」
「だから! そういうのを想い浮かべないでって言っているでしょっ!? 余計に強く成って行っちゃうじゃないのよっ!」
その言葉通りに、その姿がよりハッキリとしたモノに成り、ミサイルの威力も格段に強力に成り、ついにレミの「夢想防御」を突破し、強烈な爆風が二人を猛烈な勢いで吹き飛ばす!
「つ、痛ぅ……っ」
「チョット、とにかく早く想い出してぇ! なんか弱点は無いの!? 直撃を喰らったらアウトなのよっ!?」
「わっ、ワカッテるよっ!って、でも幼稚園の頃に観ていた内容なんだよ、ハッキリと何て憶えているワケがっ!?」
「何でもイイから早くして――ぇっ!」
っと、待てよ……、超能力……、一人のシスターがソレに対抗して……、って
「ワカッタ――――ァっ!!!!」
「想い出したのっ!?」
ズガガ――ン! ズガガガガ――ン! 相変わらずモンド・ギリアスの激しい攻撃は続いている
「アイツは「十字架」が苦手だったんだっ! とにかく、何でか知らないが「十字架」を見たり、ソレが近くにあったりすると、混乱して「超能力」を使えなく成るんだっ! レミ! 十字架だっ! モンド・ギリアスの弱点は十字架なんだよっ!」
「ほっ、本当にそうなのねっ!? ソレが間違いだったら、アタシ達、本当にもう後《あと》が無いわよっ!?」
「なんでもイイ! 早く「十字架」を造ってくれっ!」
「ワカッタわよっ!」
そう言って、手を広げ少し気合を入れてから構えをした後、空に向かってその言葉を叫ぶレミ。
「エルハビット・クロスっ!!!!」
その途端、空に巨大な「十字」の光が現れて、モンド・ギリアスに向かって飛んで行く。
バシ――――ッ! その巨大な十字の光がモンド・ギリアスに当たり弾け飛ぶ! そして。
「グァ――――ッ!」
苦手な「十字架の光」を浴びて混乱し、慌てふためいてドタバタと何やらわめいているモンド・ギリアス!
「やったっ! 効いてるぞっ!」
「ほっ、本当にコレが弱点なのねっ!? 倒すにはどうしたらイイのっ!? そのアンタの好きっていう戦隊ヒーローは最後、モンド・ギリアスをどうやってやっつけたのよっ!?」
「まっ、待て、今、想い出すっ!」
「とにかく、早くして、まだアイツ完全には倒れていないわっ!?」
「ワカッテる、今頑張って想い出すから待ってくれっ!」
そう言いながら、一生懸命記憶を巡らせるオレ……、モンド・ギリアスを倒したとき……、フィーダーデッドは毎回必殺の武器で相手を仕留めていたはずだ、アレ、何て言ったかなァ……っ!?
「早くして! アイツまた起き上がってくるっ!」
「ワカッテるってば、チョット待ってくれっ!」
そうだ、プラズマ・ガンデッド! フィーダーデッドの必殺武器はプラズマ・ガンデッドだっ! ソレで最後、敵をいつも木っ端微塵に吹き飛ばすんだっ!
「プ、プラズマ・ガンデッドだっ!」
「何よソレ!?」
「戦隊ヒーロー、フィーダーデッドの必殺の武器なんだよ! ソレを出してくれっ!」
「アタシに出せるワケ無いでしょっ!? アンタの好きなヒーローが使っていた武器なんかアタシが具現化出来るワケ無いじゃない! 一生懸命記憶を辿って、ソレを頭に想い描いてっ!!!!」
「おっ、オレがアイツをやっつけるってのかよっ!?」
「言ったでしょっ!? 此処《ココ》は夢の中なのよっ!? 想い描いたモノなら、何だって形に出来るのっ! モンド・ギリアスを倒す武器がどんなのだったかを想い描いて! そしたら、アナタの手にその武器を出すコトだって出来るのよっ!!!!」
「オレが倒すってぇのかっ!」
「そうよ! アタシはこのモンド・ギリアスもその何とかっていう戦隊ヒーローも観たコトが無いんだからっ、早く想い出して! ソレを具現化して――――ぇっ!」
「十字架の光」を浴びて混乱していた、モンド・ギリアスだったがようやく少し落ち着きを取り戻し、再び二人に襲い掛かり始める、二人の周《まわ》りには飛んでくる岩石と放たれるミサイルが次々と着弾していく。
「もう! また元気に成っちゃったじゃないのよ、アイツが――ァ!? 早く! 早くその必殺武器っていうのをっ!」
「ワカッタよっ! 今やるから待ってくれっ!」
フィーダーデッドのプラズマ・ガンデッド、どんな形をしていた……、なんか先端がとがっていて……、巨大な引き金が付いていて……、妙なカラフルな色彩の……、なんかそんな……、なんかそんなヤツだ……っ、オレは一生懸命今想い出した武器の形を頭に想い描く、周《まわ》りに襲い掛かる爆風はレミがなんとか「夢想防壁」で防いでいるが、そう長くは持ちこたえて居られないだろう、よし、ハッキリと、想い出せオレっ! 何だかワカラナイがとにかくやってみるかっ!
「ほっ、本当に頭に想い描いたのが出てくるって言うんだなっ!?」
「何度も言わせないで! 此処《ココ》は夢の中、想い浮かべたモノなら、何だって具現化出来る! 何度もそう言ったでしょっ!?」
「あァ――、ワカッタよっ! ちきしょう、しょうがない! こう成ったら、何だってやってやる!」
オレはもう一度、頭にシッカリとフィーダーデッドの必殺武器、プラズマ・ガンデッドを想い描く。
「出でよ! プラズマ・ガンデッド!!!!」
その途端、オレの周《まわ》りに閃光がほとばしり、その手の中には懐かしいあのフィーダーデッドの必殺武器プラズマ・ガンデッドが握られていたっ!
「でっ、出た! コレでやっつけられるぞっ!?」
ズガ――ン! ズガ――ン! ズガガガガガ――ン!、相変わらずモンド・ギリアスから放たれるミサイルが二人の周囲に巨大な火柱を上げている。
「ゴチャゴチャ言っていないで早くソレでやっつけて――ぇっ!」
「まっ、待てっ! モンド・ギリアスはプラズマ・ガンデッドを用意して照準を合わせようとすると、瞬間移動して逃げちまうんだっ!!!!」
「ハァ!? 何よソレ――! そんな余計なコト、思い出さないでっ! ソレじゃあやっつけられないじゃないのよ――っ!?」
「だから、もう一度アイツを混乱させてくれ! さっきの「十字架」を! フィーダーデッドは十字架を造って! ソレでモンド・ギリアスが混乱しているときに、プラズマ・ガンデッドを放ったんだっ! もう一度、さっきのヤツをアイツに浴びせてくれ――っ!!!!」
「なんだか知らないけど、んとに、厄介なのを出してくれちゃったわネェ、ワカッタわよ! でも、撃ち漏らすんじゃないわよっ!」
「ワカッタ――――ァ、準備は出来ている、照準を合わせたら逃げられるんだっ、だからオレがアイツにコレを向ける前に早く! もう一度さっきのヤツをっ!」
「ワカッタわよっ! エルハビット・クロスファイアっ!!!!」
と、空に向かって両手を広げそう叫ぶレミ、すると空中に二重に成った巨大な十字架の光が現れ、モンド・ギリアスに向かって吹き飛んで行く!
バシ――――ッ!!!!
「グァ――――――――ッ!!!!」
巨大な二重の十字架を喰らい、取り乱し混乱し慌てふためいているモンド・ギリアス!
「今よっ! 撃って――ぇっ!!!!」
「ワカッタよっ! プラズマ・ガンデッドっ!!!! いっけぇ――――――――っ!!!!」
ズギュ――――――――ン!!!!
オレの腕の中にあったフィーダーデッドの必殺武器、プラズマ・ガンデッドから強力なレーザー光線がモンド・ギリアスに向かって放たれる!
ドシュ――――――――――――ッ!!!!
その光線が勢いそのままにモンド・ギリアスのドテッ腹を見事に撃ち抜く!
「やっ、やったかっ!?」
今の一撃を確認するようにモンド・ギリアスを目で追うオレ。
「うっ、う……っ、ウグァ――――――――ッ!」
と、いう雄叫びをアゲそして……
ドガガガアアアアアアアアアアアアアア――――ンっ!!!!
巨大な炎を上げて大爆発して消滅するモンド・ギリアス。
「やっ、やったわっ!?♪」
「ふっ、ふぅ……、ハァハァ……」
プラズマ・ガンデッドの威力が半端無くその衝撃で、身体にかなりの負担が掛かっていたオレは、消え失せて立ち昇って行くその火柱を見つめながら、何とか息を整えようと体勢を保っていた……。
「やっつけられたわっ!?♪って、今のは凄かったわねっ?」
「ふ、ふぅ……、こっ、こんなんで、い、イイのか……? フゥフゥフゥ……」
「アンタが余計なコトを考えるから、とんでもないのが具現化しちゃったじゃないのよ、ったく……、でもやっつけられたわ? なんとか♪」
レミは至ってご機嫌な様子だ。
「オマエは……、毎回こんなシンドイ想いをして、そのワイリーなんとかっつぅヤツラと戦って来たのか……っ?」
「毎回こんなのばっかりじゃないけど……、まぁね?……でも今のは相当な相手だったわ……、この夢観てる人、よっぽど汚染されていたみたい」
「そのワイリー・フラウってぇのに、悪い根を付けられた人は、どんどん悪い人間に成っていっちまうのか……? ふぅ……ふぅ……」
「そう、病原体と一緒……、早めに見つけて対処しないと……、どんどんその人の心を蝕《むしば》んで行っちゃうの……、今日の人は、おそらく相当前にワイリー・フラウと出遭っていたんだわ……」
「そっ、そうか……、とっ、とにかく、疲れた……、ひと休みさせてくれ……」
「ウフフフ♪ そうね、でも何とかやっつけられた…、今夜はユックリ休んでね♪」
「お、おぅ……、んじゃ、また明日な?」
「うん♪」
そう言ってレミと別れ、オレは自分の夢の中に戻って、ユックリと休養を取った……
「ふぅ……、シンドかった……、毎回あんなのは疲れて大変そうだが……、オレがあのフィーダーデッドの必殺武器を使えるように成るなんて……、ソレこそ夢にも想わなかった……、って、でもコレ夢の中なんだよな……、夢ってぇのは本当に何だって出来ちまうんだな? に、しても疲れたぜ今夜は……、ユックリと休ませて貰うか……」
そんなコトを考えながら……、オレは深い眠りに落ちて行った……。