【 第四章 】
そして、その夜、また夢の中でのコト……、いつものコトと成って驚かなくは成っていたが、また彼女が現れる……、だが、今日は少し事情が違う……、そう、今日学校で起こったコト、アレは何だったのか!? そのコトでオレの頭の中は一杯だった……。
「おっ、おぃ……っ、今日のアレ、アレは一体何だったんだよっ!?」
今日起きたコトへの驚きをそのままに彼女に問い掛ける。
「言ったでしょ? 近々報告出来るコトがあるって」
「ほっ、報告っ!? とにかくアレは一体何だったんだよっ!?」
「アナタとアタシはドリーム・ウォーカー、夢の中を自由に行き来出来るの」
「ハァ?」
何だソレ…っ、オレは全くワケがわからなかった。
「ちょっ、チョット待て、そのドリーム何とやらってのはイイとしてだ、今こうして喋っているのはオレの夢の中だけのコトじゃないっていうのか?」
困惑しながらも精一杯の質問を浴びせる。
「そう……、アナタとアタシは夢の中で繋がっているの」
「なっ、何だってぇ!?」
ソレを聞いて更に困惑するオレ。
「アナタが観ている夢をアタシも一緒に観ているって言ったらワカルかな」
「は、ハァ……?」
何だよソレ……、どういうコトなんだよ……。
「今こうして喋っているのを、オマエも夢の中で同じように喋っているっていうコトか!?」
「簡単に言うと、そう、アナタはドリーム・ウォーカー、人の夢の中に入り込むコトが出来るの」
「なっ、何だそりゃあ、どっ、どういうコトなんだよっ!?」
どう考えても理解出来ない……っ、夢ってぇのは、眠っているときに脳みそがなんか、その日にあった記憶やら情報なんかを整理している最中に観ているモノだって聞いていたつもりだが……。
「アナタには、他の人には無い能力が備わっているっていうコトよ」
「夢の中を行ったり来たり出来るってぇのか!?」
全くワケがワカラナイ……、人の夢の中に入り込むコトが出来る? そんなの今まで観たコトも聞いたコトも無いっ。
「1万人に一人くらいは居るの、そういう人が……、だからそんなに珍しい力では無いんだけど……、ほとんどの人はアナタと同じ、ソレを知らないまま一生を終える人がほとんど」
「いっ、1万人に一人……?」
な、なんか多いのか少ないのか良くワカラナイ数字だが……、日本の人口が1億何千万か居るって成ると……、日本に1万人以上は居るってコトか……? だとしたら、結構多いのか? なんか、とにかくよくワカラン……。
「一つ聞きたいんだが……」
「なに?」
「この今喋っている会話を、オマエはオレと、えっと……レ、レミと実際に喋っているっていうコトに成るのか?」
「そう……、アナタは朝起きたときには大部分は忘れてしまうようだけど……」
確かに……、毎晩この娘がオレの夢の中に出て来ているっていうのは最近よく憶えては居たが……、何を喋ったかまではいつもほとんど忘れてしまっている……。
「とにかく、良くワカラな過ぎるコトだらけだ……、どう理解したらイイんだ……、今日オマエがオレの学校に転入して来たってぇのは夢じゃないよな……?」
「うん……、事情は色々とあって話せば長いんだけど……、アナタの学校にアタシが編入したのは本当の話」
「なっ、何でウチに編入して来たんだよ……」
「だから……、話せば長いし、今ココで話してもきっと……、明日の朝に成ったらアナタは内容をほとんど忘れてしまっているから……」
「信じろってぇのか? その話を……」
「うん♪」
チョットそんな感じで楽しげに答える彼女。
ダメだ……、ワカラン……、どう考えても全くワカラン……、頭が混乱しそうだ……、コレって夢だよな? 夢の中なら何が起きてもおかしくは無い……、っていう論法からすると、今ココで喋っている内容がデタラメであっても何らおかしくは無いっていうコトに成っちまうんだが……、ソレが、現実の相手と実際に喋っている? ダメだ……、そっから先が全く理解出来ない……っ。
「だから、そんなに慌てるようなコトじゃないし、珍しいコトでも無いって言っているのに……」
と、コトも無げにそういう彼女。
「何処がだよ! 夢の中で現実の相手とやりとりが出来るなんて、どう考えてもおかしいだろ!? ソレこそ夢物語だろっ!」
オレは焦りを抑えられず、そう声高に叫んでいた。
「そ、普通ならね? 本当にただの夢物語……♪」
慌てているオレの様子を楽しむかのようにクスクスと笑いながらそう言う彼女。
「本当のコトなのか、夢なのかハッキリさせてくれっ」って、どう考えてもコレは今夢の中だよな!?
「いまは夢の中だけど……、何度も言うようにアナタには、人の夢の中に入る力があるのよ、だから、今こうしてアタシとやりとりが出来ているの」
「ワカラン……、ダメだ……、何度聞いてもただの夢としか思えん……」
「うん、だって今実際夢の中だしね♪」
そう言って楽しげに笑っているレミ。
「オレの頭がおかしく成っちまったのか? 夢と現実がごっちゃに成ってって……っ」
「ぅぅぅん、アナタは正常、大丈夫、混乱するのもワカルけど、チョット落ち着いて♪」
そう言ってまた笑っている彼女。
全く……、一体どう成っちまったっていうんだ、このオレは……、日々の憂鬱さにイイ加減愛想が尽きてどっかがおかしく成っちまったんだろうか……。
「何度も聞くが……、今こうしてオレは……、そ、そのレミと……、あの現実世界に居るレミと同じ……人物と喋っているのか?」
「うん」
あっけらかんとそう返す彼女。
マジかよ……、何か嬉しいような……、良くワカラナイような、とにかく何か理解不可能な話だ……、大丈夫か? オレ……、余りにも突拍子も無い事実を突きつけられて、どうにも納得が出来ないオレが居た……。
「何か証明出来るモノがあれば、とも、思うけど……、今何を言っても、朝起きたときには、そのほとんどの内容をアナタは忘れてしまうから、今、ココでアナタとアタシが喋ったっていう証拠を残すっていうのは、チョット……難しいかな?と、思うんだけど……」
「じゃあ、今オレしか知らないコトをココで言って、オマエが今度学校でオレにソレを話してくれたら、今ココで起こっているコトを信じられるかもしれん……」
「ソレイイかも? じゃ、なんか……アナタだけしか知らないはずのコトを今話して?」
何となく、そんなようなのを言っている映画みたいのがあったような気が一瞬したが……、ソレは置いておいて……。
「わ、ワカッタ…、もし、ソレをそのとき学校で聞いたらオレが驚くっていうのを言えばイイんだな?」
「そ♪」
そう言って楽しげな視線を向ける彼女、余りに驚くコトの連続で忘れていたが……、とにかく彼女……、そうレミは可愛い……、視線をコッチに向けられたとき改めてそんなコトを想ったオレが居た……、っと、そんなコトを考えている場合じゃなくて……、オレしか知らないはずのコトか……、そうだな……、アレコレと思い巡らせて見る……、小学校の頃にあったコトなんかにするか……? 林間学校でクラスメートの島崎が片想いの相手に思い切って告白をしようと相談されたコト……? アレはオレと島崎しか知らないはずだ……、いやもっと昔のコトにするか……? ちっちゃい頃、大雨が降った後《あと》に出来た空き地の水溜りで初めてカブトエビを観たコト、今その空き地はマンションに成っているコト……、いや、なんか違うな? じゃ、もっと昔の……、ちっちゃい頃にテレビで観た戦隊ヒーローで一番好きだった敵の名前……、ほぼ毎回1話完結の話にも関わらず一度だけ戦隊ヒーローを翻弄し2話に渡って登場したヤツ……、よしコレにしよう、今頃あんな昔のヒーローモノの内容を憶えているヤツはほとんど居ないだろうし、第一この敵の話を誰かとした覚えがオレは一度も無い……、だからコレを知っているのはオレだけだ……、もしこの敵の名前を明日学校でレミが言ってきたら、オレは驚く……、よし、ソレにしよう……、何だか良くワカランし、メチャクチャしょうもないコトを自分でも考えているとも想ったが……、オレは半信半疑でレミにその敵の名前を告げた……。
「モンド・ギリアスだ」
「は? なにソレ……」
「オレが幼稚園の頃に好きだった戦隊ヒーローに出て来た敵の名前だ」
「なにソレ……」
と、言って笑っているレミ。
いやオレだって、自分で言っていてしょうもない話をしているな?とは、感じているが、もしコレを今頃に成って、しかも誰にも話していない、しかも戦隊ヒーローの敵の名前をこの笑顔がステキな「可憐な美少女」がオレに言おうモノなら、必ずや「なっ、何でオマエがソレを知っているんだ!?」と、驚くはずだ……。
「なんでもイイ、とにかく今度オマエがオレに、オレが幼稚園の頃好きだった戦隊ヒーローモノに出て来た敵役、だと言ったら、オレはゼッタイに驚くし、実際に夢の中で繋がっているというのを信じる根拠に出来るはずだ……」
「なんだかワカラナイけど、ソレでイイのね?♪」
と、楽しそうに笑っているレミ。
「わ、笑うなよ、オレなりに一生懸命、かっ、考えたんだぞ!」
「ワカッタ……、えっと、なんだっけ? モンド・ギリアスっていうのが幼稚園の頃に観ていたアナタが好きな戦隊ヒーローの敵の名前なのね?♪」
レミはおかしそうだ……、ちきしょーオレだってもうチョットマシな個人的なヒミツを言いたかったが、他にイイのが浮かばなかったんだよ。
「とっ、とにかく、女の子、しかも女子高生が、そんな昔の戦隊ヒーローの敵の名前なんて知っているワケが無いだろ? だから! ソレを言ってくれたら、きっとそのときオレはこの今の状況を理解する手掛かりに成るんだよ!」
「ワカッタ、ワカッタから怒らないでよ」
と、言いつつまだ笑っているレミ。
「笑うなって言っているだろっ!」
「うん、ゴメン……」
と、謝りながらもコロコロと顔をほころばせて楽しげに笑っている……、う~ん、かっ、可愛いから何となく許してしまうが……、どうにも言った自分が恥ずかしい感じでなんか悔しい気持ちだ……。
「じゃあ、アナタがココでのやりとりに慣れて来てイイ頃合いに成ったな?って想ったら、ソレを言うから、そのときを楽しみにしててね?♪」
「お、おぅ……」
とか、言いながらまだ笑っているレミ。
「笑うなよ! 一生懸命考えたんだよっ!」
「いゃ、だって……、すっごい可愛いヒミツだから……っ♪」
結局、その日は笑われっぱなしで、その後深い眠りに就いていったオレだった……。