【 第二十二章 】
文化祭での告白、アレから少ししてのコト、そうこうして訪れたリサとオレとの初デートの日。14時駅前だったな? 行って見ると既にリサが待っててくれていた……。
「ゴメン、待たせちゃったかな?」
「ぅぅぅん、イイの、アタシがチョット早く来過ぎただけだから♪」
そう言って嬉しそうに微笑んでいるリサ……、可愛過ぎるだろ……、箕屋本《みやもと》達が熱を上げるのがワカル気がするぜ……。
「どうしよっか? とりあえず、何しようか?」
「考えててくれてなかったの?」
と、む~っと口をとがらせて、少し不満げのリサ、ったく……、いちいち可愛くてしょうがない……、屈託が無くてあどけなく、何かの小動物のように愛らしいその様子にキュンキュン来捲くっているオレが居た……。
「あ、いや、なんていうか……、街ブラして、どっかで飯食って、んで、公園か何かに行ってノンビリ出来ればイイかな? くらいの漠然としたプランは考えては居るんだけど……」
「あっ、えっと……、うん、ソレでいい♪」
と、上気してほころんだ表情のリサ……、ったく……本当に、とにかく可愛過ぎるからと、何度言えば……。
「どっか行きたいトコとかあるか?」
一応、リクエストがあるか確認する。
「う~~んと、ね……」
「うん、なんだ?」
「水族館、行きたい♪」
ニコッと笑って、右横から微笑んでいる、いちいち可愛いなァ、もう本当に……。
「そっか、じゃ、水族館行って、その後どっか景色のイイとこか何かで飯食ってって、そんな感じで行くか」
「うん♪ ネェ」
「ん? なに?」
と、観ると、オレの服の腕の部分をチョットだけつまんでいるリサ。
「腕、組んで歩いても……、イイ?」
少し控え目な面持《おもも》ちでそう聞いてくるリサ、ったく本当に……、ただでさえ可愛い娘に……、そんなコトを言って貰えてソレを拒む男が何処に居るのか? いやそんな「奇特なヤツ」はこの世には居ないんじゃないか?とか、そんな風に想っていた。
「いゃ、あの、い、いいよ? リサがイヤじゃ無かったら……」
ドギマギしている気持ちを抑えるようにして、そう伝えるのが精一杯だった……。
「うん♪ じゃ、行こう♪」
と、行ってオレの右腕にギュッとくっついてくれるリサ……、はァ……幸せ、っていうのは、こういうコトを言うんだろうか……? チラッとそんなコトを想ったオレが居た……。
「水族館……、この辺だと、臨海公園か」
「うん、ソコがイイ♪」
「行ったコトあるの?」
「ぅぅぅん、初めて、すっごい楽しみ♪」
そう言って、いつもの三日月状に弓なりに成った眼でオレを見つめながら、ニッコリと微笑んでいる……、かっ、可愛い……、このほころんだ笑顔に見つめられて恋に堕ちないヤツなんてきっと居ないだろうな……? そんなコトを考えながら電車に乗った……、車内は空いていて、「おぅおぅお二人さん見せ付けてくれるじゃネェか?」と、いった因縁《いんねん》を付けて来そうな柄の悪い人なども居ない様子、ソレを確認してから、ギュッとくっついてくれているリサをいとおしく想いながら、ノンビリと走る午後の電車に揺られていた……、少し走って行くと、窓から遠くに水平線が観えて来る……、海が近い証拠だ……。
「キレイだね……♪」
その目の前に広がっていく水平線を眺めながら、ポツリとそう言っているリサ。
「うん……」
何ていうか、言葉に成らないような幸せな気持ちが自然と沸いて来ているオレが居た……。
そして駅に着き、臨海公園へと入っていくオレ達、何でもサッカー場12面分モノ広さがあるらしい。
「こりゃ、この時間からだと、1日じゃ周《まわ》れそうに無いなァ?」
「そうだね……、こんなおっきぃトコロだなんて知らなかった……」
「とりあえず、めぼしいトコに狙いを付けて、一気に周《まわ》るか」
「うん♪ 全部観れなくても……、そしたら、また今度来ればイイし、デートの予定が1個増えるから、アタシ的には……、ソレはソレで……、何ていうか……、嬉しいし♪」
そんな風に言ってくれている……。
この娘は一体ナニモノなんだろうか? こうまで人を幸せな気持ちにさせてくれる存在が世の中に居るか? いや今、そんな天使のような娘が目の前に実在している、チョットやそっとじゃ信じられん……、と、なんか、そんな心境に成っていた……。
そして入り口を通り、薄暗い水族館に入っていくオレ達……、最初は小さな水槽が並んでいて、珍しい海生生物達がたくさん陳列されていた……。
「わっ、観てぇ? なんか変なのが一杯…♪」
普段、オトナしい感じの娘であるリサだったが、意外とそういった変テコな感じの生き物に結構ご執心な様子だ。
「こういうの平気なんだ?」
「うん……、なんか面白い……、ソレにこのちっちゃい仔、可愛い~♪」
「ラ・ドゥニア…、何かの深海魚だな?」
「変な形してるけど、面白い♪」
すっかりその「深海魚」が気に入った様子のリサ。
他にも、いろいろな「変わった感じの生き物」が居て、横に書いてある「説明」などを読まなくてもかなり楽しめた……、時間があればジックリと1個1個の「説明」も読んで行きたかったが……、おそらくソレは「男子的好奇心の満たし方」であり、女の子と一緒に「水族館」を周《まわ》っているときは、ソレはしない方が良さそうだな?とか、そんなコトを想っていた……。
そして、更に進んで行くと少し大きな水槽が並び始める……、タカアシガニやらクモガニなんかがウジャウジャ居る水槽が並んでいた……、コレは結構エグイなァ……とか、思っていたがリサはそういうのも「大丈夫」なようで。
「カニさん達が一杯~~♪」
と、夢中でソレらを眺めて居た……。
普段、オトナしくて全然そんな様子は見えないが、実は結構、恋愛にも積極的で「好奇心も旺盛」で……、と、いった意外と「アクティブな娘」なんだな?っていうのが段々とワカッテ来た感じだった……。
と、ソコから先は、海の中を再現したような大きな水槽が並び始め、ウミガメやブリ、アジといった魚が泳いでいるのが見えた、ソレら大きな生き物に隠れるようにしてタツノオトシゴやらクマノミなんかも見られて段々と賑やかな水槽が並ぶように成って来ていた。
「キレイ……」
その再現された海中の様子に見入っているリサ……。
ベタなコトを言わせて貰うとしたら、その見入って眼を輝かせている君の方が「もっとキレイだよ」……、とか、チョットそんな「キザなセリフ」が一瞬頭を過《よ》ぎったが、ベタ過ぎるので言うのはヤメテ置いた……。
「ふぅ……、大分歩いたね?」
「そうだな? チョット座るか」
「うん……」
ジュースを買ってきて、ベンチが置いてあるトコロで少し休憩を取る。
「本当に広いネェ? ネェこの地図で見ると、まだ3分の1も来てないよ?」
「広過ぎだろ、ココ……、こりゃ到底、1日じゃ観られないなァ?」
「そうだね、また時間あるときユックリ観に来ようね?」
「おう、そうだな、んじゃ、次のデートプランの予定がとりあえず1個出来たな」
「うん♪」
そう言って嬉しげな表情を浮かべているリサ、何度も言うが可愛過ぎる……、オレとの時間を楽しんでくれているようで何よりだが……、今のこの時間は本当に現実世界のコトなのか?と、いうような気がしていた……、女の子ってスゴイなァ?と、正直、そんな風に想った……、こうやって一緒に傍《そば》に居てくれているだけで、何ていうか凄くドキドキした気持ちにさせてくれる……、まるで歩く遊園地というか、アトラクションと、いうか……、そういう力があるな?とか、そんな風に感じていた……。
しばらく休憩を取り、チョットお喋りをしていると……、結構時間が経《た》ってしまっていた為、最後にこの水族館で一番大きな水槽を観て今回は帰ろうというコトにして、ソコへと向かった、何せ、サッカー場12面分もあるコトから大分歩いたが、ようやくその「大水槽」の前に辿り着いたオレ達……、ソコで観たモノは正直、言葉には出来ないようなキレイな光景が広がっていた……、たくさんの魚達が泳ぎまわり、熱帯魚やヒラメ、キレイな珊瑚に、アンコウやウツボといったチョット恐い感じの生き物、ソレにチョット大きなサメなんかも回遊している、イワシの大群なんかもおり、とてもじゃないが……「水槽?」とは想えないような青い幻想的な世界がソコに広がっていた……。
「うわァ~~♪」
ソレにすっかり見とれているリサ、純粋無垢な子供のようなキラキラした眼で泳ぐ魚を一心に追っている……。
「スゲェなァ?」
「うん……♪」
「コレ、水槽ってコトは水入れ替えたり、掃除とかしたりしてんのかな? どっかで管理しているんだろ? コレ」
「うん……、そうだと想うけど……、せっかく何だからそういう現実的なコトを言わないの♪」
と、言ってチョット笑っているリサ……、その青い光の中にキラキラとした眼で浮かび上がったリサの表情は……、言葉に出来ない程……幻想的で……、目の前に広がっている海の中を再現した光景とあいまって、まるで、この娘は人魚か何かでおとぎ話の世界からやってきた「妖精」なんじゃないか?と、いうような感じでオレの眼には映っていた……。
「はぁ……」
ふと、ため息が漏れる……。
「どうしたの?」
「いや、なんか……、今この瞬間が……、幻想的過ぎて……」
「うん……、そうだね……♪」
「また……来ような……? ココ……」
「うん♪ また、ゼッタイ」
相変わらずそのキラキラとした子供のような瞳でオレを見つめながら、そう言ってくれていた……。
そうして、ひとしきり水族館の「幻想的な世界」を味わったオレ達……、外に出てみると既に陽は沈み、すっかり夜に成っていた……。
「キレイだったネェ♪」
「うん……」
また、繰り返すようだが……、「キミの瞳の方がもっとキレイだったよ」と、言いたかった気持ちをオレが一生懸命抑えていたのはヒミツにして置いて貰いたい……。
「なんだか、お腹一杯っていう感じ♪」
と、言ってイタズラっぽく笑っているリサ。
「ハハハハ、まァな? なんていうか、中身が濃すぎてチョット疲れたな?」
「うん…、本当ココスゴイよね? アタシ……ね?」
「おう、なに?」
「デートで水族館来たのって初めてだったの」
「そ、そうか……」
「だから……、何ていうか……、ナオトくんと一緒に観た今日の光景……、ずっと忘れられないって想う……」
「…………」
言葉に成らなかった……、こんなに嬉しい言葉を言って貰えるとは全く思って居なかったコトもあり、不意打ちを喰らった感じだ……。
「また、ユックリ時間あるときココに来ような」
「うん……」
「ソレと……、そうやって初めて一緒に出掛ける場所……、どんどん増やして、想い出一杯作ろうな?」
「……うん……♪」
そう言ってうなづくリサ……、その眼には少し涙が滲んでいた……。
「どっ、どうしたんだよ、何、泣いてんだよ……」
「ぅぅぅん、何か……、すっごく嬉し過ぎちゃって……♪」
「そっ、そっか……、でも、ソレ聞いてオレも……」
「うん」
「嬉しいから……、また……一杯色んなトコロ行って一杯遊ぼう」
「うん♪」
そうして、感涙を流してくれているリサが落ち着くのを待ってから、その幻想的だった水族館を後にし、その日は帰り掛けに、高台にあるチョット景色のいいファミレスで飯を食ってからオレ達はそれぞれの家路に着いたのだった……。
ふぅ~~、何ていうかキュンキュンしっぱなしの1日だったなァ……、でも……女の子って本当にスゴイ……、横に居てくれてるっていうだけで……こんなにも人を幸せな気持ちにしてくれる存在……、オレはリサを……ずっとずっと大事にして行きたい……、そんなコトを少し願うような気持ちで想いながら、深い眠りに就いていったのだった……。