【 第二十一章 】

「おぃおぃ、オマエよ?」
 いつものようにぶしつけにそう話し掛けてくる箕屋本《みやもと》。
「なんだよ、イキナリ……」
 いつものようにミートボールを口に運びながら、モグモグと咀嚼《そしゃく》して、ソレに答えているオレ。

「オマエ、遂《つい》にリサちゃんとまで、ゴールインしたらしいな?」
 少々不満げな表情でそう言っている。
「あァ、いや、まァ、うん……」
「本当にオマエはラッキーなヤツだぜ!?」
 まァな? 確かに……、今年に入って「彼女」と、呼べる存在が曲がりなりにも「2人目」だ……、以前のオレからすれば、ソレは天文学的数字とも呼べるかもしれない……。

「ったくよぉ? 結局、クラスツートップ、全部オマエに持っていかれちまったってワケじゃネェか」
 持っていかれちまったって、そんな人聞きの悪い……、とも想ったが、確かに……結果として、そんな感じに成ってしまった……、なんで、そんな美味しい展開に成っているのか自分でもいまだ実感が無い感じだ……。

「オマエは確実にクラス、いやソレに飽き足らずウチの学年の男子生徒達を「敵に回した」と、言っても過言では無いだろう」
 言わんとしているコトはワカラなくは無いが、当のオレ本人としては、アレやコレやと画策《かくさく》をした憶えは無い……、だから、その点については「無罪」を主張させて貰いたいのだが……。
「オマエ、モテモテだな? どうやったら、そんなに簡単に彼女なんてモノが出来るんだっ?」

 はて……、何かしただろうか……、正直、オレから何かを仕掛けた、と、いうのは一切無い気がする……、ソレにも関わらず、クラス、ツートップの二人と付き合えたなんて……、まるで、マンガかアニメの話のようだ……。

「ったくよぉ、本当に羨ましいヤツだぜ……」
 少々ヤケっぱちの様子で白飯をかきこんでいる箕屋本《みやもと》。

「箕屋本《みやもと》……」
 静かにオレが言う。
「なっ、なんだよイキナリ改まって?」
「オレ、こう想うんだよ……」
「ん? なんだ?」
「恋愛って実は、意外とソコら中にあるモノなんじゃないか?ってな…」
「ふん、簡単に行ってくれるぜ、だとしたら今のオレに彼女が居ないのは、どう説明出来るんだ?」
 更に、ヤケっぱちな様子で、ハンバーグと白飯をかきこんでいる箕屋本《みやもと》。
「いゃ、まァ、ソレに関してなんだけどな? 一番大事なのはさ」
「うん……」
「そういった、恋のトキメキみたいなモンをいつも感じる、もしくは感じようとしているか?ってコトが大事なんじゃないかって想うんだよ」
 オレなりに想うコトを、そうハッキリと言ってみた。

「トキメキをって……、オレ達が日々レミちゃんのエンジェル・スマイル、ソレにリサちゃんの可愛らしい雰囲気に、どれだけ萌え撒くって、そしてキュンキュン来ていると思ってるんだよっ!」
 少々興奮気味に、そう言っている箕屋本《みやもと》。
「そっ、そっか…、ソレは……、そうだよな……?」
「そうだよ、オマエだって日々癒されているんだろ? 今はリサちゃんに」
「うん……、ソレは全く否定しないが」
「ソレと同様にオレ達が、どんだけあの二人にドキドキしているか、何かの数値ではゼッタイに表わせないっていうくらい凄まじいコトに成っているぜ?」
「そっか……」
 じゃァ、一体何なんだろうか……、男と女が結びつく理由……、一応考えては見たが、すぐには思い浮かばなかった……。

「ったくよぉ、何でもイイ、オマエは今モテ捲くっている、そのコツとか秘訣とかを少しは伝授してくれよ?」
 飯をかきこみ、お茶をグビグビと飲み干しつつ、そんなコトを言っている箕屋本《みやもと》。
「コツネェ~~……」、正直、全く想い付かないオレが居る……、レミとは互いがドリーム・ウォーカーだったっていう特殊な共通点があったコト……、リサとは……「体育祭と文化祭実行委員」で、二人きりで色々とやるコトが多い時間を持つコトが出来た……、どっちも偶然そう成ったコトであり……、オレが意図して仕掛けたモノじゃない……、だから「秘訣」を、と、聞かれても、言葉に窮《きゅう》してしまっているオレが居たんだが……。

「ふん、まァ、何でもいいよ、とにかくオメデトな? 一応、友人としての立場からすれば、オレはオマエ達二人のコトを温かく見守ってやるぜ」
「お、ぉぉぉおぉ、どうした箕屋本《みやもと》? 随分と殊勝《しゅしょう》なコトを言ってくれるじゃないか」
「おうよ、人のコト、やっかんだり羨《うらや》んだりばっかしていたらよ? ソレこそ何か幸せが遠のいて行くような感じがするからさ、こう成ったら、徹底的に友達想いのイイヤツっていう路線でオレは行くぜ? ソレにオマエとリサちゃんが付き合ってるっていうコトで、オレ的にはリサちゃんと話す機会が増えそうだしよ?♪ そういうのをアピール出来るイイ機会なんじゃないか?とか、チョット想ってんだよ」
 と、臆面も無くそう言ってのけた箕屋本《みやもと》。

「なんだよ、結局下心あり捲くりじゃネェか……」
 オレも飯をかきこみ終え、お茶を飲みながらそんな風にツッコんでみる。
「おうよ、オマエさっき言ってただろ? 恋に大事なのは「トキメク気持ち」をいつも持っていろって」
「ま、まァな?」
「だからっていうワケでも無いけどよ!? オレのレミちゃんとリサちゃんへの想いは以前にも増して強く成っているっていうワケだ」
 またしてもハッキリと、そんなコトを言っている、本当に裏表の無いヤツだな? コイツは……、そんな風に思いながら話を聞いていた。

「この「トキメキ」を忘れずに何処までも突っ走って行くつもりだぜ」
「お、おう……、じゃ、オレもソレについては……、お、応援させて貰うよ……」
「さっすが、やっぱツートップをモノにした男だけはあるな? 何ていうか今の言葉、忘れないでくれよな?」
 わずかな希望にすがる想いからか、少し眼を輝かせながらそんなコトを言っている。
「ワカった……、ま、コチラからも、ソレについては、改めてヨロシク……な」

「おう、でもよ、オマエは今、ウチのクラスの男子、ソレにとどまらず学校中から羨望のまなざしで羨《うらや》ましがられているワケだ……、だから何かあったら言えよな? 中にはチョッカイ仕掛けて来るようなヤツが現れるかもしれないからよ、そういうのには気を付けろよな」
 箕屋本《みやもと》らしい言葉だ……、そんな風にチョット想ったオレが居た……。

「あ、ああ……、うん……、アリガト……とりあえず、気を付けとくわ……」

 正直、今のこんなシチュエーションに成るなんて全く考えたコトは無かった……、何ていうか、このオレはそのいつも妬《ねた》んでいる側の人間だったからなァ? ソレを想うと……、確かに敵対心むきだしで何かしてくるヤツが現れてもオカシくはないかもな?と、何となくそう想っていた……。