【 第十九章 】
体育祭の一件以来……のコト。
いつものように、ワイリー・フラウに汚染された人達との戦闘を終え、少し一息付いているときのコト……。
「ナオトくん……」
「ん?」
「ナオトくん……、アタシとのコト……、んと……」
「な、なんだよ? ハッキリ言ってくれよ」
と、言葉に詰まったレミを促《うなが》すオレ……。
「前に……、言ったよね?」
「ん? なにがだ?」
「リサちゃん、の、コト……」
「あ、ああ……」
「ナオトくん……、リサちゃんのコト……、どう想っているの?」
ズバリ、ツッコまれた、そういう風に感じたオレが居た……。
「いやっ、あのっ、どっ、どう想っているかってっ、あのっ、そんなっ!?」
「ウフフフフフ♪」
「なっ、なんだよ……、なんでソコで笑うんだよ……」
「ぅぅぅん、やっぱりな?って想って…」
「やっ、ぱり……?」
「うん……」
少し寂しげな表情でレミはそう言った……。
「体育祭のときの、ナオトくんとレミちゃんを観てたら……、なんとなく……ね……」
「…………」
女の子って本当に鋭いな? そう想ったオレが居た……。
「でも、しょうがないよね? コレばっかりは……」
「…………」
「リサちゃんの心の中にあった「黒い壁」が何を意味しているかは、アタシには結局ワカラなかった……、でも、あの娘、イイ娘だよね……、体育祭のときもそうだったけど……、普段観ててそう想うように成った……、だから…、ナオトくんが……、リサちゃんのコトを……」
「ちょっ、チョット待ってくれっ!」
慌てて、ソコでレミの言葉を遮《さえぎ》った、ひょっとしてコレ「別れ話」か? そんな風に感じて焦ったからだった……。
「イイの♪ こうやって夢の中でナオトくんと過ごすように成ってもう半年……、毎晩一緒に居るから、ナオトくんが、リサちゃんのコトを考えているのは、何ていうかすぐワカッちゃうっていうか……」
少し苦笑しながら、そう言っている。
「ナオトくん、素直だから……」
「ゴ……、ゴメン……」
「…………」
「正直、リサのコトが気に掛かっているっていうのは、ある……、でも、ソレでオレとオマエが……」
「アタシ……ね?」
オレの言葉を遮《さえぎ》るようにレミは話を続けた。
「うん……」
「浮気されるのはイヤなの……」
ハッキリと、そう言ってきた……。
「ソレに、アタシ達はドリーム・ウォーカー同士、お互いが深層心理でどんなコトを想っているかなんて隠しようが無いから……」
「そっか……」
そういえば、そうだったな……、だから、オレが今リサのコトが気に掛かっているのなんて、レミには痛いほどハッキリバレちまってるっていうワケなんだな……、オレは少し「諦めに似た気持ち」を感じていた……。
「でもね? アタシは、ナオトくんのコトが好き」
「…………っ」
「引き篭もっている状態から、復帰出来たのはナオトくんに出逢えたからだから……」
「そ、そっか……」
「だけど、夢の中の世界は所詮夢の中……、現実世界でナオトくんに好きな人が出来ちゃったんなら……、アタシにはソレを止める力は無いよね……」
「…………」
「だから……、待ってる……ね?」
「レ、レミ……」
何て言ったらイイのか、ワカラなかった……。
「でっ、でもよ! オレ、あのクリスマスの日! レミに逢ってっ! 想ったんだっ! 世の中捨てたモンじゃないかも!?ってっ、ソレがどんなにオレにとって「元気の源」に成っているかっ! しかも、その娘とこうして恋人同士になんて! 今でも信じられない位、そのコトがオレの中で自信に成っているんだよ!」
「うん……、アリガト……、そう言ってくれるだけで、嬉しい……、ナオトくん優し過ぎるよ……」
レミは尚も悲しげな感じでそう言った……。
「でも、もう……、一旦、別れるっていうように……、オマエは決めてしまった、の、か……?」
「…………うん……、ナオトくんのリサちゃんへの気持ち……、ソレがワカッちゃうから……」
「…………」
潜在意識がバレてしまうっていうのは……、正直こういうときって、どうにも成らないのか……、オレは……、諦めるしかない、そう想ってしまっていた……。
「でもね? 何度も言うけど……」
「うん……」
「アタシは今でもナオトくんが好き……、でもそのナオトくんの中に他の人への気持ちがあるのなら……、ソコはソレで大事にして欲しいの……」
「…………、別れるって、コトか……」
「…………うん……」
「…………」
この今のレミへの気持ち……、ソレに反して日々大きく成って来ているリサへの気持ち……、ソレがある以上は……、コレ以上何を言っても……、正直、そんな気持ちに成っていた……。
「わかった……、でも……、でもよ? こうしネェか?」
「ん、なに?」
「オマエ……、まだこの後も、ワイリーの連中と戦っていくつもりなんだろ?」
「うん……、ソレは続けるつもり……」
「だからっ、ソレはオレも続けさせてくれ」
「……っ」
「でっ、こんなコトは言いたくは無いんだけど……」
「うん……」
「現実世界……、いや一応、恋人同士っていう関係は……、一回……」
「うん……」
「ココで終わる……としても……、だけど……、オマエ一人が戦っていくなんて、そんなのを放って置ける程、オレ簡単にオマエのコト忘れたりは出来ネェよ!」
「ありがと……、本当にナオトくん……優し過ぎるよ……」
そう言って、少し寂しげに微笑むレミ、そしてこう言ってくれた……。
「じゃあナオトくんがソレでイイって、言ってくれるなら……、ソレは……今後も、お願いしちゃおっかな……」
「おう、オマエ一人だけに、世の中の辛い部分を背負わせておくなんて出来ネェよ! だから、オレもコレからもワイリーとの戦いを……続けさせてくれ」
「うん……ありがと……♪」
こうして……、リサへの気持ちが日々大きく成ってしまったオレは……、レミと……、一旦、別れる、というコトに成った……、でも、ワイリー・フラウとの戦闘は続けて行けるコトに成ったようだ……、そうするコトで、レミとも夢の中ではまた会うコトが出来る……、一度、深い仲に成った人と……、簡単に断ち切れに成ってしまう……、ソレだけは避けたい、そんな気持ちもあったからでもあるのだが……、だけど、とりあえず……レミとは恋人同士という関係では無く、戦いをする為にパーティを組んでいる仲間……、そういう風にして接して行くというコトに、そう決まってしまったようだった……。