【 第十二章 】

 ある日の晩、いつものようにワイリー・フラウに汚染された人を探して、夢の世界を移動していたときのコト……、と、ある人の夢の中に入ったオレ達。

「どうも、コンバンハ、ちゃきちゃきの江戸っ子です!」
 と、言うその夢の主。

「なんか、自分で言ってるぞ?」
「そういうのは、何か言われてから言い返すときに言うコトなような気がするんだけど……」

「そんなコト無いですよ、ワタシはちゃきちゃきの江戸っ子よ」
 と、再びその夢の主。

「なんなんだ? コイツは……」
「さァ……、まァ夢の中だからこういう人も居ると言えば居るのかもしれないけれど…」
 と、レミ。

「ソレはイイとして、オマエ悪いヤツなのか?」
「はい、ワタシは悪いヤツです」
 そう即答している。

「なんか、あんまりそんな感じがしないんだが……」
「そうね、この人からは悪いオーラが感じられないわね?」

「そんなコト無いですよ、ワタシはモノ凄い悪いヤツですよ」
「だから、そういうのもあんまり自分で言うコトでは無い気がするんだが……、おい、この人を早くスキャンしてくれよ」
「うん……、チョット、待って」
 と、言ってハンディ・スキャナーをその夢の主にかざすレミ。

 ビ――――。

 軽い起動音がして、スキャンが終わる。
「どうなんだ?」
「カラー・グリーンだわ」

「ってっ、オマエ違うじゃネェか?」
「何が?」
「普通にいいヤツじゃネェかよ」
「そんなコト無いわよ、アタシは悪いヤツよ」
 何でか知らないがそう言い張っている。

「何でそんな悪いヤツぶりたがるのよ……」
 レミは、この人のキャラが可笑しくなって笑い始めている。

「ソレに、最初の江戸っ子っていう「言い張り」は何だったんだよ?」
 っと、ツッコまずには居られずそう言うオレ。

「ちゃきちゃきの江戸っ子なのよ、このアタシは」
 っと、何処までも強情なその夢の主。

「そんなに言うなら何か、その江戸っ子エピソードを聞かせてみろよ」
「ワカッタわよ、聞いたらビックリするわよ?」
「なに、ビックリするって?」
 なんなの? と、いった感じでチョット笑いをこらえている様子のレミ。

「アンタ達が、アタシがどれだけ江戸っ子かっていうのでビックリするって言っているのよ」
「何だよソレ……、なんだビックリする江戸っ子っていうのは……、そんなに言うなら聞かせてみろよ、ソレを……」
「アンタ達が想像しているより遥かにアタシは江戸っ子なのよ」
「ワカッタから早く聞かせてみろよ、そのビックリする江戸っ子ぶりってぇのを……」
「いいわよ、ビックリするんじゃないわよ?」
 と、その夢の主。

「おい、この会話要るか?」
「何が?」
 と、笑いながら答えているレミ。

「コレ本編と関係あるのか? こいつグリーンなんだろ?」
「うん」
「じゃ、もうとっとと次に行こうぜ?」
「まァ、そうなんだけど……」
 そう言いながら、レミはまだ可笑しそうに笑っている。

「ビックリするって言っているじゃないのよ、何よ、聞いてきたのはアンタ達でしょ? だったら、ちゃんと最後まできちんと聞いて行きなさいよ」
「ワカッタよ、そんなに言うなら聞いてやるから、早くオレ達をビックリさせてみろよ」
 何なんだコイツは…、とかチョット思いながらそう言うオレ。

「イイわよ……、このアタシはネェ」
「うん」

「お祭りが好きよ」

「……」

「……で?」
「ちゃきちゃきでしょ?」

「おい、この人とコレ以上関わる必要があるのか? ページ数を無駄にしていないか? なんか……」
「いゃまァ、そうなんだけど…、なんか可笑しいんだもん、この人♪」
 そう言ってレミはさっきからずっと笑っている。

「いゃまァ、オレも決して嫌いなタイプでは無いとは想うんだが、要るか? このやりとり……」
「正直、必要無いかも……」
 と、言いながら可笑しそうに笑っているレミ。

「驚いたでしょ?」
「なにがだよ」
「アタシが凄いちゃきちゃきだって」
「全然そんなんじゃ驚かネェよ、江戸っ子がお祭り好きってのは当たり前じゃネェかよ……」

「……」
 ツッコまれて閉口している夢の主。

「おい、もう行こうぜ? この人グリーンなんだろ? このまま好きにさせて早く次に行こうぜ?」
「うん……、まァそうなんだけど、何か面白い、この人……♪」
 レミはこの人がツボに入ったようだ。

「ちゃきちゃきよ」
「ちゃきちゃきなのはイイよ、でも全然驚かネェし、オマエいいヤツじゃネェかよ」
「アタシは悪いヤツよ」
 ああ言えば、こう言うっていう感じの対応を繰り返す夢の主。

「ったく…、なんか無駄に天邪鬼なヤツだな……」
「なんでアナタ、アタシ達に江戸っ子って想って貰いたいの?」
「ちゃきちゃきだからよ」
 まだ、そんなコトを言っている。

「おぃもう行こうぜ? なんか話が進まネェよ、この人……」
「そうね? まァ夢の中だし会話が成立しないのもしょうがないわ、多分、江戸っ子って言われたいって心のどっかで想っているのよ、この人はきっと」
 そう言いながらまだレミは可笑しくて堪《たま》らない様子だ。

「うん」
 と、うなづくその夢の主。

「やっと、マトモにうなづいてくれたぞ……」
「そうみたいね、とりあえず言っておくけどアナタは悪い人じゃないわよ?」
「そんなコト無いわよ、アタシは悪いヤツよ」
 何処までも一歩も引かないでいる。

「おぃ、もう行こうぜ? 本当に……、なんか、とにかく、話が進まネェよ、この人……」
「そうね♪」
 ようやく満足してくれたのか、次の人の夢へと移動するのを承諾したレミ、そしてオレ達はまたワイリー・フラウに汚染された人を見つけに他の人の夢へと移って行った……。

「ったく、今のヤツは、なんていうかこう、身に成らないっていうか、なんか無駄に時間食っただけのヤツだったな……」
「まァ……そうかもしれないけど、アタシ的にはチョットツボに入った……、あの人……♪」

 そんな感じで、レミは今の人をチョット気に入った様子だったが……、一応、睡眠時間を削っているというワケでは無く、オレも今、眠っている状態だから別に構わないと言えば構わないのかもしれないのだが……、どうせならもうチョット「有効な夢」を観ている人の中に入りたい……、そんな風に想ったその日の夜だった……。