【 第十章 】
「ソレで……、アタシこう想ったの」
「うん、なんて?」
「このまま引き篭もってちゃダメだ、人生は何度だってやり直せる、この人はそう言っている」
「ソレで……、雪の中頑張ってケーキを売っていたワケだ……」
「そう……、もう一度やり直す為には何だってやってやるって……、そう想えていたから……」
「そっか……、ソレはイイことだな……、オレが自分の中でそんなコトを想っているなんて想わなかったよ、オレの方こそ「諦め」の気持ちばかりで毎日くさくさして過ごして居たんだから……」
「でも、潜在意識のアナタは諦めて居なかった……、とても凄いコトなのよ? ソレって」
「ハハハハ、何ていうか……、お褒めに預かり光栄至極って感じだな」
と、笑って返すオレ。
「ウフフフ♪ でもビックリした、近くに住んでいる人なんだっていうトコロまではワカッテいたの……、でも、あのとき……ナオトくんを観て……」
「オレだって気付いたワケだ……」
「本当に驚いた、でも、この人が……、この人が……その人なんだって想ったら、アタシ何か嬉しく成っちゃって♪」
「フフフ……、通りでね? ヤケに明るくて元気な娘って、そう想った……、あのときのレミのコト……、ひとときとして忘れたコトが無いよ……」
「ぇ……?」
「あの12月の寒空、雪まで降っている中で…、まるで……」
「まる、で……?」
「ハハハハ、笑わないで聞いて欲しいんだけど……」
「うん……、大丈夫信用して♪」
「じゃ、思い切って言うけど……、まるで、雪の中に天から舞い降りた「妖精」みたいだって……」
「なっ、なにソレ……」
と、頬を赤らめるレミ。
「本当にそう想ったんだ……、こんな娘が頑張っているのに、オレは世の中に対して愚痴ばっかりコボして、何にもしてネェ……、その……レミのあのときのまばゆい位のステキな笑顔……、忘れられなかった……、正直、今でもね……」
「アハ……、そ、そうなんだ……、そんな風に想ってくれてたんだ……、全然ワカンなかった……」
「ハハハ、ソレ位、オレは卑屈に成って居たってコトかもしれないな……」
「…………」
少し押し黙るレミ。
「ん? どうした?」
「ぅぅぅん、そんな風に想ってくれて居たんだって想ったら、アタシ……嬉しくて……」
そう言うレミの眼には少し涙が滲んでいた、寒空の中、再び世の中に出て頑張ろうと想ったあの日を境に自分がしていたコトが意義のあるコトだったっていうのを改めて実感しているようだった……。
「だから……、アタシはアナタにお礼が言いたくて……」
「いゃ、ソレを言うのは……、どっちかっていうと、オレの方がっ」
「……っ、アハ、アハハハハハハ♪」
そう言って楽しげに笑うレミ、ソレにつられるようにオレもおかしく成って一緒に笑っていた……。
「アハハハハハ♪」
「アタシ……、ナオトくんのコトが好き……」
「……っ!?」
正直、嬉しくて堪《たま》らなかったが今の話を聞いていると、その言葉を……素直に受け止められるような気がしていた……。
「なんていうか、感謝の気持ちで一杯……、ふさぎこんでいたワタシにまた新しい毎日を……、アナタの心の奥底にある熱い情熱がプレゼントしてくれた……、だからアタシにとってはあの日は本当に……、人生をやり直す為にサンタさんがくれたクリスマス・プレゼントっていう気がしていたの……」
「おっ、オレもだよ! くさくさとふさぎこんでいたオレに……、レミの妖精みたいな眩しい笑顔と優しい気遣い、そして何より寒空の中頑張るオマエの姿……、オレは……、一瞬だけど……、神様みたいなモンを、サンタクロースっていう夢の存在を……、もう一度……、信じてみようかなっていう気持ちに…、成れたから……」
「…………」
「……」
「じゃ、お互いいいクリスマスだったんだね? アナタのハートにアタシは救われた……、ワタシ……ナオトくんのコト……、愛してる……、夢の中で言っているからちゃんと伝わっているかはワカラナイけど……♪」
「あっ、いやっ、あの……っ」
「どうしたの?♪」
「まいったな……」
「ウフフフフフ♪」
そう言ってコロコロと鈴のような声でほがらかに微笑むレミ……、誰がどう見たって天使だろ、オレはそのとき、そう想って、この見解に対して「誰にも反論を許さない」とか何とかなんかそんなような気持ちに成っていた……。
「オレもまだ……」
「うん……」
「レミの全部を知ったワケじゃない……、自分がドリーム・ウォーカーって知って間も無いし、人の深層心理についての勉強もまだまだだ……、ソレにレミの潜在意識までオレはまだ知るコトが出来ていない、だから……」
「だから……?」
「オマエのコトを全部知っているワケじゃない! でもオレはレミが好きだっ!」
「……うん……」
「その気持ちに、変わりは無いから……」
「ありがとう……♪」
その日、その夢の中で何があったかどうかまではハッキリとは憶えていないが……、ソレが切っ掛けだったんだと想う……、オレとレミは…、現実世界でも……、そのつまり……自分で言っていても、チョット恥ずかしいんだが……、その「恋人」というコトに成ったのだった……。