葛原未央
(かずはらみお)

高三・十八歳

桂二の恋人になる

晄一 と仲良くなる

條原桂二
(しのはらけいじ)

三十四歳

妻子持ち

体育教師

実は家庭内別居状態

大分前から未央が
気になっていた

離婚後、一葉と暮らす

砂森晄一
(すなもりこういち)

保険医・三十歳・ゲイ

桂二と未央の理解者兼協力者

未央と同い年の恋人がいる

忍足綺芽
(おしたりあやめ)

高三・十八歳

晄一の幼馴染み兼恋人

名前の通り綺麗な容姿で心も純粋

葛原理貴
(かずはらりき)

四十五歳

未央の父親

桂二との交際を最初は反対する

葛原紀子
(かずはらのりこ)

四十歳

未央の母親

父親同様、
桂二との交際を最初は反対する

十一年前、
兄が同性の恋人と出て行った

来栖結凪
(くるすゆうなぎ)

四十八歳

紀子の兄

夏楓の恋人

十一年前、家を出た

東城夏楓
(とうじょうかえで)

三十八歳

結凪の恋人

條原冬紗
(しのはらかずさ)

三十一歳

桂二の元妻・一葉と芙深の母親

若い恋人がいる

條原一葉
(しのはらかずは)

中学三年・十五歳

父親に同性の恋人が
出来ても気にしない

離婚の際は父親についていく

未央同様に学校の先生が好き。

宮戸夢仁
(みやとゆめひと)

二十五歳

一葉の思い人で後の恋人

條原芙深
(しのはらふみ)

小学五年生・十歳

離婚の際は母親についていく
僕には好きな人がいる。

それは体育の先生。

名前は條原桂二(しのはらけいじ)。

三十半ばとかなり年上だし、
既婚者なのも知っている。

家族思いのいい父親だ。

子供は確か、上の子が中学生の女の子。
下の子が小学生の女の子だったはず。

情報は全部、職員室の前で
立ち聞きした事に過ぎない。

相手は教師で同性で年配で更に既婚者。

一番のネックは“既婚者”だって事だ……

例え気持ち悪がられても
独身だったなら、
または、冷めた家族だったなら
振られるのを
覚悟して告白していただろう。

だけど、職員室の前で
立ち聞きしている限り、
條原先生は家庭を大事にしているから
生徒で更に同性に告白されたら
戸惑ってしまうだろうだろう。

だけど、実は
毎晩、先生に抱かれる夢を見るから
寝不足気味だったりする……

叶わないから願望を
夢として見るのだろう。

そんなある日、僕は
体育の時間に倒れた。

『葛原‼』

目が覚めたのは保健室だった。

『條原先生』

授業はどうしたのだろう?

そう思っていたら、
意外な質問をされた。

『何か悩み事でもあるのか?』

おそらく、保健医の先生から
寝不足だと聞かされたのだろうと
すぐに見当はついた。

しかし、悩み事の種が
條原先生本人だとは
面と向かっているわけにはいかない。

ましてや、僕の単なる片思い。

『俺を好きって本当か?』

答えられずにいたら
とんでもない質問が飛んできた。

何で!?

もしかしたら、保健医の先生は
僕の気持ちに
気付いていたのかも知れない。

目が覚めてから二度目の沈黙……

これは、嫌われても
誤魔化すより本当の事を
言ってしまった方がいいのかも知れない。

『そうです。
僕は條原先生が好きです』

ベッドに寝たまま話す。

『だからといって
先生は気にしないでください』

家族思いの先生に答えを
求めるつもりはない。

顔を見れずに壁側を向いた。

『葛原、こっち向け』

呼ばれても向けずにいると
條原先生に耳元で名前を呼ばれた。

『未央』

何でそんな優しい声で呼ぶの……?

変に期待させないでほしい。

だって、先生は既婚者で
不倫関係にはなりたくない……

名前を呼んでも振り返らない
僕に痺れを切らしたのか
無理矢理自分の方に向かせたと
思ったら、唇を奪われた。

今、先生とキスしてる……

こんなことされたら
本当に期待してしまう。

『これが、俺の気持ちだ』

これは都合のいい夢?

起きてるのに夢を見てるのだろうか?

『だって、先生は既婚者で
家族思いのいい父親なのに……』

『周りから見ればそうだろうなぁ。
だけど、実際はそうじゃないんだ……
妻には若い恋人がいるし、
下の娘は俺とあまり口を利かない
上の娘は家族の中で唯一
俺と話してくれるけどな』

知らなかった。

先生ん家が冷めた家庭だったなんて……

『離婚話も出ているから
近々、離婚するかもな』

**桂二side**

葛原が体育の時間に倒れた。

授業はバスケだったため、
試合をするように言い渡し
保健室に葛原を運んだ。

砂森先生によれば寝不足らしい。

原因を聞いた時、
最初は信じられなかった。

“葛原君は條原先生が
好きなんですよ
恋愛感情でね”

うちの家族は傍から見れば
仲のいい家族に見えるだろうが
実際はバラバラだ。

唯一、上の娘だけが
俺と話してくれる。

目が覚めた葛原に
悩み事があるのかと訊いてみた。

そして、俺が好きなのかとも。

反応を見れば一目瞭然。

葛原は俺が好きなんだと。

そして、実は俺も
葛原が気になっていた……

砂森先生から聞かされたことは
驚いたが同時に嬉かった。

『そうです。
僕は條原先生が好きです』

ベッドに寝たまま話す葛原。

『だからといって
先生は気にしないでください』

既婚者だということを
気にしてるのだろう。

『葛原、こっち向け』

呼んでも向かない葛原に
耳元で名前を呼ぶ。

『未央』

名前を呼んでも
振り返らないから痺れを切らせ、
無理矢理自分の方に向かせたて
唇を奪った。

『これが、俺の気持ちだ』

我慢できずにキスしてしまった。

『だって、先生は既婚者で
家族思いのいい父親なのに……』

やはり、気にしていたのはそこか。

『周りから見ればそうだろうなぁ。
だけど、実際はそうじゃないんだ……
妻には若い恋人がいるし、
下の娘は俺とあまり口を利かない
上の娘は家族の中で唯一
俺と話してくれるけどな』

うち冷はめた家庭だ。

『離婚話も出ているから
近々、離婚するかもな』

嘘ではない。

今は家庭内別居状態だ。

これは、時間の問題だ。
倒れた日から数ヵ月後、
言っていた通り條原先生は離婚して
上の娘さんの一葉ちゃんと暮らし始め、
引っ越しの手伝いに行った
僕を“恋人”だと紹介した。

「お父さんにいい人が
見つかってよかった」
とその時に一葉ちゃんが言った。

先生の家族に
認めてもらえるのは嬉しい。

そうそう、
砂森先生にも報告した。

***************************

そんなにいい事が
続くはずがなかった……

一葉ちゃんにも認めてもらい、
砂森先生とも仲良くなって
二ヶ月後、僕は昼休みに
目隠しをされ複数の男たちに
体育倉庫に連れて行かれた。

見えないが女子達の
声がするということは
何となく察しがついた。

何処かで僕が條原先生改め桂二さんを
好きだということを知り、
ライバルを減らそうという算段だろう。

しかも、男の僕なら
最悪犯されたとしても
誰にも言えず、妊娠もしないから
真実は闇に葬れる。

桂二さんが好きなら
ライバル潰しなんてしてないで
少しでも好いてもらえる
努力をすればいいものを……

そんな呑気な事を考えているが
かなりピンチだったりする。

目隠しされていても
パターンは読めてしまう。

ヤバいなぁと思ったその時
体育倉庫が乱暴に開けられた。

入って来て、桂二さんが
僕の格好を見て
普段より低い声で怒鳴った。

『お前ら何してる‼』

桂二さんが来てくれたお陰で
やられずに済んでよかった……

僕を犯そうとしていたとは
言えないだろうけど、
状況がそれを克明に
物語っているから
言わなくても分かるだろう。

目隠しは外してくれた。

スマホを取り出すと
電話し始めた。

内容からして晄さんだと分かった。

数分後、紙袋を持った晄さんが来た。

「あ~あ、これは酷いなぁ……
葛原君、とりあえず着替えておいで」

僕に紙袋を渡すと
体育館内のトイレを指して言った。

『分かりました』

桂二さんと晄さんが居れば
あいつらも逃げようとは思わない。

晄さんが渡してくれた
紙袋には着替一式が入っていた。

サイズがぴったりなのは吃驚だけど。

トイレから出て倉庫に戻ると
全員が正座させらていた。

晄さんはともかく桂二さんは
体育教師だけあって高身長で
威圧感を感じさせる。

しかも、怒っているせいか
背中に見えないはずの
どす黒いオーラが見える。

『解っているか?
これは犯罪だ』

拉致され(校内で)、軟禁され(体育倉庫)
終いにはやられそうになったわけだ。

『葛原、
こいつらに何かあるか?』

さっき考えてたことを言おう。

『あのさ、ライバル潰しなんて
してないで少しでも
好いてもらえるように努力しようよ』

正座させらている人達と
目線を合わせて話した。

『その方がいいと思うよ』

僕からはそれだけだ。

「今日は葛原君の優しさに
免じてお前らを
許してやるから
二度とこんなことするなよ」

普段と少し話し方が
変わってる晄さん。

返事はなかったけど、
同じことはしないだろう。

**保健室**

『未央』

ぎゅうっと桂二さんに
抱きしめられた。

「いいな、俺の恋人は
今頃、学校だから電話できないんだよ」

晄さんの恋人は
僕と同い年らしい。

『会ってみたいな』

桂二さんが人の悪い笑みを浮かべた。

『僕も会ってみたい』

気持ちは一緒だったりする。

晄さんの恋人はどんな子なんだろ……

一回りも違うってことだよね?

まぁ、僕と桂二さんも変わらないけど。
桂二さんに今度の連休に
泊まりに来ないかと言われた。

提案者は一葉ちゃんらしい。

お泊まりするのに桂二さんが
両親に挨拶に来るという。

そういうところは教師気質だと思った。

しかし、これが裏目に
出るとはこの時は知る由もなかった。

どれがいけなかったのだろう?

桂二さんが〈教師〉だからか、
それとも、〈年上で同性〉だから?

恋愛をするのにどれも関係ないと思う。

〈教師〉と〈生徒〉というのは
まぁ、多少問題ありだが
そんなものは障害ではない。

バレなければいいわけだし、
知っているのは晄さんだけ。

僕達が自ら話さなければいい話だ。

それに、僕が卒業してしまえば
それこそ問題がなくなる。

『反対する理由は?』

普段、僕は滅多にキレない。

『未央、落ち着け』

今は桂二さんに止められても無理だ。

肩に乗っている桂二さんの手を
やんわりと退かした。

『僕らが教師と生徒だから?
それとも、同性だから?』

後者なら間違いなくマジギレする。

「私達だって、あなたが
年上でも年下でも例え先生でも
“女の人”を連れて来たならよかったのよ?」

やっぱり後者か……

それを偏見って言うんだよ‼

ふざけんじゃねぇよ。

久々にキレた僕は父親を殴った。

『相手が “女の人”だったらよかった?』

晄さんだって、僕らと同じだ。

【“女の人”だったらよかった】

そう言われた時に、晄さんの恋も
否定されたと思った。

桂二さんは口を挟まない。

「あぁ、そうだ」

立ち上がりながら父親が言った。

「昔は女の子を
連れて来ていたじゃないか」

そりゃぁ、僕だって
彼女がいたこともあった。

桂二さんだって、バツイチだし
根っから同性が好きだったわけじゃない。

だけど、僕らはお互いを好きになった。

性別なんて関係なく
惹かれるものがあった。

『確かに、彼女がいたこともあったし、
彼以外の同性にはドキドキしないけど
僕は彼を好きになった』

もしかしたら、
僕はバイなのかも知れない。

今はそんなことはどうでもいいが……

『母さんはそれを言って
僕が伯父さんみたいに
出て行くとは思わなかったんだ?』

十一年前、僕が小学校二年の時に
結凪伯父さんは同性の恋人の夏楓さんと
居るために家を出て行った。

僕の言葉で母さんは顔を青ざめさせた。

それはそうだろ。

父さんにすら話しなかったんだから。

『伯父さんは今頃、夏楓さんと
幸せに暮らしているだろうね』

この三ヶ月後、伯父さんと
会えるとは思っていなかった。

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

結果的に母さんは認めた。

十一年前を思い出して
「認めるから出ていかないで」
と言って折れた。

父親は納得しない顔を
していたが母さん同様、
僕が居なくなるよりはと思ったのだろう。

三泊四日のお泊まりが決まった。

桂二さん家では一葉ちゃんと
一緒に料理をした。

僕達は仲良しだ。

『一葉ちゃんは何で
桂二さんについてきたの?』

妹の芙深ちゃんは
母親について行った。

「こんな事言ったら、
バチがあたるかもしれないけど
私はお母さんが嫌いなの」

娘が母親を嫌いになる理由はなんだろ?

この場合は【浮気】だろうか?

『そっか、でも、芙深ちゃんと
離ればなれで寂しくない?』

妹の事はどう思ってるのか……

「お父さんには内緒よ?
はっきり言って、あの子苦手なの」

苦笑いしながら話してくれた。

「なんていうか、
目がお母さんそっくりで……」

一方の芙深ちゃんはどうなんだろう?
と思うが話す機会はないから
解らないままだ。

「未央さんは何で
お父さんを好きになったの」

一目惚れに近かったから
理由を訊かれると答えに困る。

『気付いたら好きになってた感じ』

桂二さんが既婚者でも
この気持ちを払拭させられなかった。

「そうなんですか……」

もしかして、一葉ちゃんは
好きな人がいるのかな?

『好きな人がいるの?』

訊いてみると一葉ちゃんは
顔を真っ赤にして俯いた。

これは図星だ。

『僕でよかったら相談に乗るよ?』

俯いてしまった
一葉ちゃんの顔を
下から覗き込んでみた。

「ほ、本当ですか?」

幾ら仲がいいとはいえ、
父親である桂二さんには
恋愛相談はできないだろう。

『うん、何でも相談して』

僕がそう言うと顔を上げてくれた。

「実は、未央さんと一緒で
学校の先生が好きなんです」

落ち着きを取り戻した一葉ちゃんは
キッチンに置いてある椅子に座り、
僕にもう一つの椅子を
勧めてくれたからそれに座った。

『どんな人なの?』

一葉ちゃんは三年になってから
好きになったらしい。

きっかけは階段から落ちそうに
なった際に助けてくれて
それからは廊下で会うと声を
かけてくれるようになり、
気付いたら好きなっていたらしい。

若くて、優しくて、イケメンとくれば
女子中学生は大騒ぎだろうなぁ。

「もうすぐ卒業ですし、
このまま伝えずにいようかとも
思っているんですけど、
踏ん切りが付かないんです……」

恋をしている女の子は可愛い。

『無責任なことは言えないけど
一葉ちゃんが卒業後に後悔しない
選択をすればいいと僕は思う。』

僕達は結果的に
たまたま両思いだった。

だけど、最初は既婚者だった
桂二さんに告白するつもりはなかった。

だけど、色んなことが
重なって“結果”告白し、
告白されて恋人同士になった。

僕達は運がよかった。

「未央さんは今、幸せですか?」

勿論、幸せだ。

桂二さんと一葉ちゃんが
居てくれるから。

『うん。
二人が居てくれるからね』

それに、渋々とはいえ
父さんと母さんも認めてくれたし。

「私、決めました‼
先生に告白してみます」

『応援してるからね』

話しが纏まり料理を開始した。
「未央?」

お泊まりから三ヶ月後、
晄さん達とダフルデートの
約束をして桂二さんと待ち合わせ場所で
二人を待っていると声をかけられた。

声が聞こえた方を向くと
そこには結凪叔父さんと夏楓さんがいた。

『ぇ!?
何で二人が!?』

十一年前に出ていったきり
音沙汰なしだったのに……

「隣に居るのは恋人か?」

僕の横に座り、成り行きを
見守っていた桂二さんを見て言った。

『うん、恋人の條原桂二さん。
桂二さん、こちらはこの間
話しに出た結凪伯父さんと
恋人の夏楓さんですよ』

紹介すると桂二が挨拶した。

『初めまして、
未央の恋人の條原桂二です』

三人の自己紹介が終わり、
この間の話しをすると
二人は苦笑いした。

「義弟と妹がすまなかったね」

伯父さんが謝ることじゃないのに……

『いえ、最終的には
認めてもらいましたから』

ただ……と桂二さんは
続けてこう言った。

『未央が父親さんを
殴ったのは予想外でしたけど』

もぉ、余計なことを……

「十一年で強くなったな」

今度は苦笑いじゃなく
笑顔で僕の頭を撫でた。

「條原さんは未央君より
かなり年上に見えるけど今幾つ?」

『三十四です』

十六歳差の僕達。

「僕と四つしか違わないんだ」

どこか楽しそうな夏楓さん。

「未央、こんな年上
何処で知り合った?」

確かに普通ならありえない歳の差。

社会人ならいざ知らず僕は学生だ。

「当ててあげようか」

夏楓さんが又しても
楽しそうな声で言った。

「未央君が通う
高校のそれも体育の先生でしょう」

凄い‼ 担当科目まで当てちゃった。

「そうなのか未央」

『うん、夏楓さんの言う通り
桂二さんはうちの学校の体育教師だよ』

晄さん達が来るまで
四人で沢山話しをした。

「そうだ、これ」

伯父さんが帰りしなに
差し出してきた手帳を
破ったそれには
二人の携番とアドと
それから住所が書かれていた。

「なんかあったら
電話なりメールなり連絡しろ。
なんだったら
直接来ても構わないからな」

それだけ言うと伯父さん達は
駅の方に歩いて行った。

そこに書かれていた住所は
車で行っても
三時間くらいかかる所だった。

「葛原君」

伯父さん達と別れて
三十分後に晄さん達が来た。

晄さんの隣に居たのは
えらく綺麗で整った顔をした
可愛らしい子だった。

『晄さん、遅い‼』

僕が態と膨れた顔をすると
「ごめんごめん」と軽く謝った。

「この子が僕の恋人で
幼馴染みの忍足綺芽だよ」

成る程、幼馴染みか。

名前も可愛らしい子だなぁ。

『初めまして、
葛原未央です。
隣に居るのが恋人の條原桂二さんです』

タメだとは事前に聴いていたけど
初対面の人にはつい敬語になってしまう。

「“みぃ君”って呼んでもいいかな?」

ゎぁ~

初めて呼ばれる呼び方だぁ。

『勿論ですよ。
僕はなんて呼べば?』

「好きに呼んで? 後、タメ語で」

やっぱ、そこにつっこむよね。

本人がいいって
言ってるから普通に話そう。

『じゃぁ、
“あや君”って呼んでもいい?』

倣ってみたけど、どうだろうか?

「いいよ♪」

よかった……

『よろしくね』

「うん、よろしく♪
條原さんもよろしくお願いします」

あや君が桂二さんにお辞儀した。

挨拶も終わったところで
早速、ダフルデートを開始した。

同い年のあや君とは
お互いの学校の話しをしたり
学校での晄さんの
様子を訊かれたりした。

「俺達って周りから見たら
どんな風に見えんだろな」

桂二さんが晄さんに
そんなことをきいてるのが
風に乗って聞こえてきた。

あや君にも聞こえたらしい。

「僕とみぃ君は
いかにも学生同士だけど
後ろの二人と知り合いだなんて
行き交う人達は思わないだろうね」

クスクスっと楽しそうにあや君が笑った。

確かにそうかも知れないと思った。

行き先は決まってなかった。

少し、距離をあけて
歩く教師二人はスマホを
見ながら何か話していたいた。

「綺芽、葛原君
行き先だけど、水族館でいいかな?」

水族館なんて
久しぶりだなぁ*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚

『僕はいいですよ。 あや君は?』

「いいよ♪
水族館なんて久しぶり」

あや君も久しぶりなんだ。

嬉しそうだ。

『じゃぁ決まりだな』

行き先が決まった。

歩いて駅に向かい、
水族館行きのバスに乗った。

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

バスに乗って一時間程で着いた。

四人で見て回り、
最後にお土産屋さんに寄った。

僕とあや君はそれぞれの恋人に
イルカとゴマアザラシのぬいぐるみを
買ってもらい、今日の記念に
僕が三人に
お揃いのストラップを買った。

「楽しかったね」

帰りのバスの中であや君が
ニコニコしながら言った。

『そうだね』

お揃いのストラップを
眺めながら僕は答えた。

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

『桂二さん、家に行ってもいい?』

寄る所があるという
二人は途中で降りたため
今は桂二さんと二人だ。

『……今日はやめといた方がいい』

目を反らしながら桂二さんは言った。

『何で?』

下からから覗き込むと
桂二さんが照れてることに気付いた。

もしかして……

『今日、一葉ちゃんがいないの?』

土曜日だもん、中学生の女の子なら
友達と遊びに行っていても
不思議じゃない。

内心、ラッキーと思った僕は
悪い奴かも知れない。

案の定当たった。
一葉ちゃんがいないと分かり
ますます、家に行きたくなった。

帰る途中でお友達の家に
お泊まりするとメールが来た。

『こんなこと言ったら
一葉ちゃんに悪いけど
今日は留守でよかったと思ってる』

僕の言葉に照れ顔から
吃驚した顔になった。

『未央、そんなこと
言うと期待するからやめろ』

クスクス♪

桂二さんにその気があってよかった。

『僕は本気だよ』

バスの中だから、耳元で
囁くように言った。

もう一押し‼

『僕も同じ気持ちだよ』

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

一葉ちゃんがいない時に
この家に来るのは初めてだ。

バスを降りた後、マンションの部屋に
向かい、着替え、
手洗いうがいを忘れずにして
寝室に連れて行かれた。

『未央、本当にいいんだな?』

桂二さんは慎重だなぁ。

話しながら僕のは
痛いくらい主張している。

桂二さんの左手を掴み、
その場所へと持っていく。

『わかる?
僕のはもうこんななだよ?』

そんな僕に一瞬驚いた後苦笑いした。

『そうか。
俺もそろそろ限界だったんだ』

手早く脱いだ桂二さんは
僕の服を脱がしてくれた。

『んっ……あっ……』

流石、大人の男の人だ。

手慣れた手つきで愛撫される。

『気持ちいいか?』

訊かれるけど、声を出したら
喘いでしまいそうだから
首肯だけで答えた。

前も後ろも散々愛撫されて
僕はトロトロにふやけてしまった。

『未央、挿れるぞ?』

確認されて、やはり首肯だけした。

『んっ、あぁぁ‼』

初めてなのに痛みは感じず、
快楽の底に落ちた。

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

『桂二さん、愛してる』

sexをして
ますます桂二さんが愛しく思った。

『俺だって愛してるさ』

事後の甘い甘い愛の囁き合い。

その日は二人で
桂二さんのベッドで寝た。