潤兄は俺から目を逸らして、少し照れながら言ってた。

想像するからにキス以上はしてないんだと思う、多分……。

確かに産婦人科に二人で行った所を目撃されれば、妊娠など疑われても仕方ないけれど……病気だって分かってるのに何で?

「茜ちゃんは病気だったんだろ?潤兄も診察の付き添いだとはっきり言えば良かったのに……」

「そうだよな、でも……、茜ちゃんの御両親が学校内でも秘密にして下さいって言ったみたいなんだ。だから、俺も秘密を守った」

「潤兄……」

潤兄が不憫で仕方なかった。

確かに病気を明かせば、茜ちゃんは偏見なので目で見られたり、興味本位に根掘り葉掘り聞かれたりするかもしれない。御両親は茜ちゃんを守りたかったのは分かる。

けれども、こんなにも茜ちゃんを思って尽くしていた潤兄はどうでも良かったのか?

診察まで一緒に付き添って勘違いされて、妊娠したとか根も葉もない噂を流されて、ケンカに巻き込まれて、停学にまでなって……。

「悔しいよ……、俺は凄く悔しい……!なん、で…潤兄が辛い思いしなきゃ…いけないの…」

子供の頃みたいに悔し涙がボロボロと溢れた。

潤兄は「海大が泣く事じゃないよ」と言い、背中をさすってくれた。