夏休みに入る前だっただろうか?

裕貴と帰っている時、駅前で声をかけられた。

「伊野田 海大、……お前、伊野田 潤の弟だろ?」

「……はい、それが何か?」

「お前のお兄ちゃんのせいで、俺達も停学くらったんだよね。ちょっとお話聞いてくれる?」

「……分かりました。裕貴、先に帰ってて」

男子二人に女子三人、何なんだよ。俺は裕貴を先に帰して、駅裏へと着いて行った。あっさりと裕貴が帰ってくれて良かった。悪い予感しか感じないので、見捨てたとは思わない。俺も裕貴を巻き込みたくないから、それで良かったんだ……。

「お友達帰しちゃって大丈夫?ジュンちゃんと一緒で正義感強いんだね?」
「俺達ももう停学になりたくないから、手は出さないよ~。まぁ、ミヒロちゃんから手を出されたら正当防衛だから、分からないけどね」

男子二人がニヤニヤと笑っている。取り巻きの女子三人もヒソヒソ話をしている。

目の前の奴らは皆、俺と同じ制服だ。

潤兄はコイツらとケンカしたのか?ケンカなんて無縁だった、潤兄が何故ケンカなんかしたんだよっ!

潤兄がケンカしたのは春休み前。……だとすると、コイツらは俺よりも上級生か?自宅に来た時に顔はよく見えなかったが、今度こそ覚えたぞ。