黙々と生姜焼き弁当を食べていたら、母が沈黙を破った。

「ヒロの合格祝いをしなきゃね。今度の土曜日か日曜日に御飯食べに行かない?」

「そうだな、そうしよう!ヒロは何が食べたいんだ?」

「焼肉!」

「……だろうな。よし、焼肉を食べに行くぞ」

中高生男子が食べたいものと言えば、やっぱり焼肉でしょう。両親との会話も笑って聞いていた潤兄。少しづつ笑顔が戻って来たかな?

思い返せば、合格祝いに焼肉を食べに行ったのが家族全員での最後の外食になった気がする。

潤兄は一週間の自宅謹慎を命じられた。左腕のヒビもあった為、新学期まで休む事になった。少し早めの春休みを二人で過ごす。

潤兄は勉強をしなかった。元々、ゲームはしなかったが……新学期までずっと、テレビを眺めていただけ。大好きなミステリー小説も読まない。スマホも放り投げたまま、ただ一緒にリビングで過ごしていた。

母がパートを休みの日に馴染みのおじちゃんの洋食屋に行った。おじちゃんは潤兄を見て、「男は喧嘩の一度や二度はするもんだ」と言って笑っていた。母も笑っていたが、内心は何を考えていたのかは不明。潤兄は苦笑いをし、静かにパスタを食べていた。