「名前聞いて良い?」

「……ふわぁ、はい、カナミです。奏でる心でカナ……あっ!!ちが、いや、……カナミです」

しまった、本名ではなく、いつもの癖で、セカンドネームを言ってしまった。

今更、しょうがないか……本名じゃなくていいや。

……本名言わない方が、身の為、かもだし?

「……?、可愛い名前だね。俺はヒロだよ」

「……ヒロ、君」

「呼び捨てでいーよ。とりあえず、飯食べよう。じゃあさ、誘い直すから……一緒に来てくれますか?」

「……は、はい」

呼び捨てでいーよ、なんて、 とりあえず、飯食べよう、だなんてっ、

私はどうしたら良いんでしょうか?

ノコノコ着いて来てしまってるけど、本当に大丈夫なの?

―――けれども、さっきの過呼吸とは打って変わって、これでバイバイなんて……と思ったりもしている。

「パスタ好き?それとも、違うのが良い?」

「パスタ……」

食べずらいかな、上手にクルクル巻けないんだよね。

つい巻きが大きくなってしまって、大口開けて食べてしまう……。

そんな事になったら、やっぱり恥ずかしいよね?

小口で食べられる物、パスタから、かけ離れ無い物……グラタン!!

「……パスタじゃなくて、グラタン!!……グラ、タンにして下さい」

「あははっ、勢い良くグラタンって言ったかと思えば……急に小声になるし、面白過ぎっ!!

オッケー、グラタンにしましょう。俺はエビが好きです」

「……私も、エビ、好き……です」

名前と“エビ好き”だけしか知らない関係。

これから、どうなってしまうのか……不安。

不安なんだけども、新しい何かが始まる予感もする。

男の子に優しくされたのは初めてで、私は錯覚し、勘違いしてるのかもしれない……。

それでも、まぁいいか。

自分が傷つかずに楽しい時間が過ごす事が出来れば、それはそれで良い―――……