先生がクシャクシャに丸められた小さな紙切れを広げて、声に出して読みあげる。

「嫉妬してるデブスが……近藤……」

近藤………?

近藤とは茜ちゃんの事だと思う。そうするとデブスとは私の事か。先生が途中で読み上げるのを止めたが、内容は容易に想像出来る。

「誰が授業中に書いたんだ?名乗り出なさい!」

先生が怒鳴り散らす。そんな事を言った所で誰も名乗り上げる訳もないが……。

放課後、担任の後藤先生に職員室へと呼び出された。後藤先生は授業中に回された紙切れを広げて、困った顔をしている。

「……紙を見せて貰えますか?」

「……良いけど、鵜呑みにするなよ」

後藤先生は新卒の先生で生徒達とも友達感覚で仲が良い。私は歳が近過ぎるし、何より琴音ちゃん達と仲が良いから、この先生はあまり好きではない。嫉妬とかではなく、同じ分類に見えてしまうのだ。

"嫉妬しているデブスが近藤の妊娠を否定している。モテない奴のひがみって怖っ!"と書いてあった。

「先生……、茜ちゃんは卵巣のう腫という病気です。それなのに何で……皆から非難されるんですか?産婦人科に行っただけで妊娠って何なんですか?」

「広沢に言って良いか分からないけどな、近藤の姉は他校だったが高二の時に妊娠して学校を辞めてるんだ。それから、噂が膨らんでしまって、近藤にも悪影響が出てしまったんだ」

だから、さっき、姉妹揃ってビッチだとか言ってたんだな。そんなのってないよ。お姉ちゃんが妊娠したとしても、茜ちゃんは茜ちゃんだよ。

「先生も今の事態を重く見てるから、厳重注意する」

「……はい、分かりました」

次の日、朝のホームルームにて昨日の紙切れの件を後藤先生が注意したが、結果的に逆効果になってしまった。