茜ちゃんが居なくなって、机はあるものの、教室の隅に移動された。

私は心に穴が空いたようで、授業中も上の空。

明日になれば、茜ちゃんが『おはよっ』って笑って来てくれると心の奥底で信じていて、残像が頭から離れなかった。

「ミヒロちゃん、茜ちゃんの事知ってたの?」

1時間目の数学の授業が終わった後の短い休み時間の時だった。

椅子に座り上の空でボンヤリとしていた私の前で、琴音ちゃんは私の机を両手で叩きながら責め立てた。

「知ってるなら何で教えてくれなかったの?うちらグループでしょ?」

「そうだよ、ミヒロだけ知ってるなんておかしいよ!」

「だいたいさぁ、妊娠とかって有り得なくない?あの子、可愛いからって裏で何してるのか分からない子だったよねー!」

「違う、妊娠してない!茜ちゃんは妊娠なんてしてないよ!……病気、だったんだよ!」

琴音ちゃんの取り巻きの女の子達も私を取り囲み責め立てたので、私は"病気"だったと主張した。

「しかもさぁ、ジュン君の事を騙して妊娠したとかって最低だよ!皆、最初はジュン君狙いだったのに抜けがけしちゃって……茜って見た目とは裏腹に腹黒いし、姉妹揃ってビッチだよね!」

「そうだよねぇ、茜ってそーゆー子だったんじゃない?付き合いがなくなって良かったわー」

この子達は何を言ってるの?

茜ちゃんは病気だって言ってるじゃない!

しかも姉妹揃ってって何?

私には茜ちゃんは、恋してキラキラしている女の子に見えていた。第一、妊娠なんて事実じゃないんだから言わないで!

茜ちゃんの悪口はこれ以上言わないで!


ガタッ………!


私は思い切り立ち上がり、

「……これ以上、茜ちゃんの悪口は言わないで!茜ちゃんは本当に良い子なの!あんた達とは違うんだからっ!」

と言ってしまった……。