あの時、一瞬でも疑うべきだったし……

おかしいと気付いてあげられなかったのが、今でも悔しくて……

“親友”失格になった。

失格になってからは、関係はボロボロ。

茜ちゃんから真実を聞かされても、子供だし、未知の世界の私には……

戸惑う事しか出来なかった。

その後に起きる出来事にどうして、全力で戦う事が出来なかったのだろう?

大人が子供の未来を潰しても良いの?

茜ちゃんは"何も"悪くなかったのに。

友達も大人も信じられなくなり、生きる糧を失った時、全てが消えてしまえば良いと思った。

みんな、皆、不幸になれば良いと思った。

そんな事ばかりが当時は頭にあって、自分勝手な想いをぶつけたから……



何も無くなった。



「今日はありがとね、付き合ってくれて……」

「……ううん、大丈夫だよ」

学校帰りの薄暗い路地を二人で、トボトボとゆっくり歩く。

冬から春に変わろうとする少しだけ暖かく感じる風が、私達の間をすり抜ける。

冬が終わりを迎えると同時に、私達の関係も終わりを告げる。

「……とりあえずは両親と先生、潤君にも言うね」

「……うん」

極度の貧血も、眠気も、食欲の無さも…つまりは、病気から来ていた。

茜ちゃんは若くして、16歳にして卵巣のう腫になり、片方の卵巣を切除しなければいけなくなるかもしれないらしい。

まだ身体も心も未熟だから、感情さえもついていけない。

詳しくは御両親を含めての病状説明になるらしく、近い内に病院に行くらしい。

茜ちゃん、大丈夫かな。

別れ道でバイバイした後、後悔した。

あの日、自宅まで送ってあげれば良かった。もう会えなくなるなんて、思いもしなかった───……