ホカホカで、ふんわりと甘い匂いのするココア。

「貧血だろうから、糖分取りな。ちなみにこの事は誰にも内緒、な?」

「……は、はい!!」

美人な保健室の先生なのに、男まさりで……でも、とっても優しい。

保健室なんて、滅多に利用する機会が無いから……高校では初めて立ち入った場所。

まぁ、時が立てば……私は毎日のように利用するようになるんだけれども、……もう少しだけ、後の話。

「甘くて美味しっ」

真っ青な顔で茜ちゃんが笑うから、少し痛々しいけれど……笑顔は嬉しかった。

ココアは優しくて、心の中までホカホカになれるから、まるで茜ちゃんみたいだよ。

「……食事と睡眠は取れているのか?」

ベッド脇のカーテン越しにある机から、話しかける保健室の先生。

茜ちゃんは、聞き逃してしまうような小さな声で答えた。

「……いいえ、最近はあんまり……取れてません」

そう言えば、一週間位前から、お弁当も半分でおしまいの日もあったし……連日、生あくびをしている姿も見た。

『眠そうだね』って聞いたら、『ミステリー小説にハマッてるから夜中まで起きちゃってるんだ〜』と返って来たから……

何も気にしなかった。

ご飯だって、『眠くて食が進まない』って言うから……信じていた。

私も夜更かししたら、そんな日もあったし…ね。