「……んー、おはよ、カナちゃん。ありゃ?何で泣いてるの?」

「……対馬さんっ、ごめ、ごめん、なさいっ……」

「何が?」

対馬さんはゆっくりと身体を起こして、起きたばかりで、まだ覚醒していない顔で会話をする。

目をうっすらと開けて、瞼を擦る。

「いつも……無理させ、て、ごめん、なさいっ!!アシスタント……、採るからっ」

アシスタントを採れば、二人を無理させなくて済む。

私の我が儘はもう、止めよう。

ヒロ君に私を紹介する時に、対馬さんに『我が儘社長令嬢』だと言われた時は……

『我が儘なんて言ってない!!』、と自分に自信があったけれど……違う。私が人付き合いが苦手だから、と言ってアシスタントを採らない事は我が儘になるんだ。

今まで、気付かなくてごめんなさい。

自己中だったよね。

二人を無理させてるなんて、気付けないなんて……“あの人達”と一緒だ。

いつの間に“あの人達”と同じ、思いやりの心を忘れた人間になったのだろうか。

ヒロ君があまりにも優し過ぎるおかげで…私はやっと気付けたよ。

お金も地位も名誉もいらない、思いやりの心で出来ている本当の信頼関係というものが素晴らしい事を……。

「……私、言うね、本当の事も、ヒロ君に…。そして、人にも向き合いたい……」

静かに流れる涙をそのままに、対馬さんに、今思ったありのままの気持ちを伝える。

立ちながら泣いているから、床にポタポタと流れ落ちる涙。

昨日から化粧は落としていないし、涙でグジャグジャの酷い顔だろう。

それでも、そのまま、対馬さんに告げる。

「……私っ、変わりたいで、すっ」

「……カナちゃん」

自分の中身を変えれば、きっと心は強くなれる。

過去をいつまでも引きずっているのは、もうおしまい。

新しい自分になりたい、ヒロ君のように優しくなりたい、二人のように心も身体も忍耐強くなりたい。

だから、今までの自分に……



さ  よ  う  な  ら。