紙袋は、いつもバッグの中にあるから言葉も出せないまま、男の子にバッグごと差し出した。

男の子は私のバッグを開けて、真っ先に紙袋を探してくれて、口を広げてから渡してくれた。

何度も息を吸っては吐いてを繰り返し、呼吸が楽になるのを待つ。

呼吸が整うまでは、頭の中は真っ白に近くて……“呼吸をする事”との考えしかない。

男の子は歩道にしゃがんで倒れ込んだ私を覆い隠すようにして、背中を擦ってくれていた。

「大丈夫?落ち着いた?顔色、真っ青だけど?」

「…あ、だ、大丈夫デ、ス」

忌々しい記憶が頭の中に広がろうとすると、拒否反応を起こす。

完全に広がってたら、きっと病院送りだった……。

呼吸が整ってフラつきはあるものの、普通の状態に戻ったので立ち上がる。

「……ごめん、俺が無理矢理に連れ出したから。今更だけど、嫌だったら断って」

過呼吸を起こすまで強く握られていた手首が離されていたのに気付き、かなりの解放感。

今なら逃げられる。

―――逃げられるけども、

さっきまでの鋭い目付きはどこにも無くて、目の前には猫目な可愛らしい男の子が立っていて、 私が逃げられなかった。

漫画の王子様やドラマの俳優とかじゃなくても、世間には、こんなに可愛い男の子って居るんだ。

初めて知ったかも?

「……あのさ、凝視は止めてくれない?恥ずかしいから、さ?」

「ひゃ、ひゃぁ、ご、ごめっ、」

「……っぶ!!見かけと違って、手慣れてないのな」