「……んっ」

「あ、カナちゃん、気付いた?大丈夫?」

「……はい」

あれ?

目の前には対馬さんが居る。

さっきまで、ヒロ君が居たハズで、手紙を見られたハズで……それなのに周りを見渡しても、ヒロ君の姿は見当たらず。

おかしいな……、何故?

手紙を見て、怒って帰ってしまったのかな?

「俺が来たら、ヒロ君が玄関先まで来てさ……カナちゃんが倒れたって言ってて、ビックリしたよ……。貧血かな?」

「……倒、れたの?私?」

確かにあの時、目の前が真っ暗になり、チカチカと細かな浮遊物が見えた。

その後、間もなくして意識が飛んだんだよね。

「何か、飲む?今、持って……」

私は、ゆっくりと身体を起こす。

「……対馬さ、ん!!手紙……、手紙を見られたの!!どうしよ……」

対馬さんが飲み物を取りに行こうとするのを足止めするように、私は対馬さんのシャツの袖を掴んだ。

「……手紙って?」

「……高校の通信教育の添削の返信。名前も、通信教育も……全部、バレた……」

「……そっかぁ、なるようにしかならないよね。待ってて、とりあえずは飲み物を持って来るから……」

対馬さんは、私の手をそっと引き離し、キッチンへと向かう。

“なるようにしかならない”……か。

そうなんだけれども、でも……

誰だって、名前も職業も違っていたら、騙されたと思って怒るだろう。

例えば、それが……お金を受け取る立場だとしても、事件に巻き込まれたら?などと考えたら…気持ちも悪いだろう。