「明日から休みだけど……夜にお弁当届けようか?」

「あ、会社からお弁当が出たりするから大丈夫、です……有難うございます」

「……そっかぁ」

月に二回は、フリーペーパーのデザインとかで忙しいから事務もちょっとしたお手伝い……とか、適当に誤魔化した。

地元密着型な小さなデザイン会社は、どんな小さいデザインもするのかなぁ?と思い……ついつい出任せで言ってしまったけれど、大丈夫かな?

嘘がバレた時が怖いけれど、今はとりあえず……嘘で固めるしかない。

嘘を重ねて、ドツボにハマる……、

それでも、自分の身の安全は第一で、嘘をつくのが平気になった。

「……じゃあ、忙しい日が終わったら電話下さい」

「……は、はいっ!!」

また会える幸せ。

手放したくない、幸せ。

漫画家になれた事の次に、奇跡のような幸せ。

「カレー、もうすぐ出来るからね」

「はい」

キッチンから、カレーの美味しそうな匂いが漂ってくる。

随分前に手放してしまった、家族の…お母さんの温もりを思い出した。

私が実家を出てから、お母さんの手料理は食べてないなぁ……。

もう、2年近くになるかなぁ……?

たまに遊びに来てくれるけれど、締め切りとのタイミングが合わなかったりで、ゆっくりは会えない。

よくよく考えたら……来ても、あんまり会話が弾まない。

離れてしまうと、実の家族もそんなモノなの?