「……うわぁっ、キャベツがトロトロで美味しっ」

口の中いっぱいに広がる優しい味が、頬っぺたをとろけさせる。

「あぁ、ごめん。ピラフはコショウが効き過ぎたね……、ちょっと辛いかも」

「私は、この位のが好きだけど?」

ピラフもブラックペッパー好きな私には、程良く味付けしてあり、とても美味しいよ。

ドキドキして、緊張して落ち着かなかったハズなのに……食事を目の前にしたら、いつの間にか、吹き飛んでいた。

「ロールキャベツは、明日の朝の分もあるからね。食パンも買って来たから、良かったら朝はそれで済ませてね」

な、何と!!

朝ご飯の準備までしてくれてるなんてっ!!

この朝のロールキャベツがかなり手が込んでいて、クリーム煮になっていた。星形の人参さんとじゃがいもが、ちりばめられていて……

ヒロ君は、今すぐにでもお嫁に行けそうな腕前だった。

私なんかより、ずっと、ずっと手慣れている。

「手慣れてます、ね?」

「……んー?だって、俺、家でも家事担当だし?」

モグモグと食事を頬張りながら、答えたヒロ君は返事をサラリと流したようにも感じた。

この時はまだ何も気付きはしなかったけれど、この言葉が……

ヒロ君にとって、重要なキーワードになるとは……

思いも寄らず―――……

「……カナミちゃんが淹れてくれた紅茶が美味しかったから、食後に飲みたいな」

二人分の食事が空になる頃、ヒロ君がボソリと呟いた。