対馬さんを玄関で見送ってから、私はヒロ君の座っている近くまで行ったけれど……座る事が出来ずに、対馬さんが使っていたティーカップを片付けていた。

何故、……何も話しかけずに、私は片付けをしてるんだろう。

頑張れ、私!!

緊張して話せない性格なんて、もう嫌。

改善するには、自分自身が変わるしかないんだ。

ドキドキと高鳴るばかりの胸に手を当てて、ギュッと目を瞑り、心に決めて話しかけようとした時に沈黙を破ったのは、ヒロ君だった。

「聞いてもいい?」

「あ……、はい」

「カナミちゃんて、何の仕事してるの?」

あ、やっぱり……気になるよね。

どうしようかな……漫画家なんだから、設定作りは得意じゃない?

さぁ、考えてみて。

「デザイン会社の……事務」

これなら、きっと……対馬さんがヒロ君に背景を頼んでもおかしくないだろうか?

しかし、ヒロ君は背景と聞いて何とも思わなかったのだろうか?

「そっか、だから対馬さんが背景と言ったんだ……」

「う……、うん、対馬さんは背景を手描きで書けるアルバイトを探してたみたい。

……というのも、地域に貢献していて、高校の演劇部とかに背景の指導したりしてるの。

小さなデザイン会社だから、何でも受けないとやっていけなくて……」