対馬さんは開いた口が塞がらない……、みたいな感じにポカンと口を開けたままだった。

……それも、仕方ないかなぁ。

もう長年の付き合いだし、色々と見抜かれてるし……ね。

「成長したね、カナちゃん……」

「対馬さん……?」

対馬さんは、私の頭を優しく撫でた。

撫でている手が、あまりにも暖かくて、優しかったから……『お兄ちゃんが居たらこんな感じかな?』と想像してしまう。

私は頼れる兄弟も姉妹も居ない一人っ子で、両親しか見方が居ない子供だったから……いや、両親しか見方が居なくなってしまった子供だったから……

今、こうして、対馬さんのお兄ちゃんのような温もりに包まれるのが好き。

「……で、ヒロ君とやらに明日会った俺はどうしたら良いの??」

「あ、そっかぁ……、明日なんだよね」

ヒロ君が面接に来るのは明日。

あれ?ちょっと待って……。

漫画家ってどうなの?

しかも、少年漫画ってどうなのー?

少女漫画ならともかく……、バリバリ戦いモードの少年漫画ってどうなのよー!?

し、知られたくない現実かも……。

「カナちゃん……?顔固まってるけど大丈夫なのー?」

「つ、対馬さぁんっ!!どうしよう……少年漫画を書いてるだなんて恥ずかしいっ……!」

私は両手で頭を押さえながら、対馬さんに心の内をぶつけた。