「送って行くから……」

新幹線を降りた時から繋がれている手。最初は緊張していたけれど、今はとても心地好くてヒロ君の手の温もりが安心する。

さりげなく手を繋いでくれる事、裕貴君も事情を知っているからか冷やかさなかった事、送って行ってくれる事、全てが私には新鮮で心温まるエピソードだったりする。

「……ヒロ君、……茜ちゃんに会わせてくれて有難う。……全部、お見通しだったんだね」

「……うん、潤兄の彼女だった茜ちゃんから、俺と同じ名前の女の子が居るって話は聞いてたんだ。だから、手紙を見てしまった時にピンと来た。その後に茜ちゃんの居場所が分かったから、カナミちゃんも一緒に連れて行きたかったんだよ。こちらこそ、来てくれて有難う」

ヒロ君は私と茜ちゃんを驚かせたい為に内緒で準備を進めてくれていた。

私と茜ちゃん、ヒロ君と潤君、意外な所から繋がって一つの円になった。そこからまた枝分かれして行く人間関係がある。

「ヒロ君……、あのね……」

「何?」

私は勇気を振り絞って、自分の想いを伝えてみる事にした。

「私は貴方となら捨てただけの過去を取り戻せる気がするよ……」

置き去りにしてしまった青春時代。今更どうこう出来るわけではないが、新たに作って行きたいと思ったんだ。

「……それって恋愛も?」

「……え?」

想いもよらない返答が降って来たので、聞き直してしまった。

「良かったら俺と付き合って下さい。あー、もー、こんな事言うのもなんだけど……、カナミちゃんは純粋だから高校時代に戻ったみたいでアオハルみたいで初々しくて気恥しいんだよね……」

暗いから良く見えないけれど、ヒロ君は照れているようだった。

「私、もう一つ秘密があって……。高校時代は……えっと、あの……太ってたし、一重が嫌で……両親の承諾を得て、……プチ整形もしました。こんな私でも良かったら、お願いします……」

「勿論、こちらこそ、宜しくお願いします……。てゆーかね、カナミちゃんの容姿も好きだけど、それよりも、その純粋さが大好きなんだよ!言いたくなかったら言わなくて良かったのに、気を許した瞬間に言っちゃうとことか……。秘密を教えてくれたのは勿論、嬉しかったけど……って、何言ってんだか、分からなくなって来た……」

ヒロ君は照れながら、滅茶苦茶に話をしていた。私は与えられた現実が幻じゃないかと思い、半信半疑だったりもする……。

それぞれのパズルのピースが揃って、再び、動き出した未来。

煌めく青春時代を取り戻すべく、君と明日へ進もう───……

【END】