「……茜ちゃん、笑ったら可愛いだろうなぁ」

裕貴君がボソリと呟く。

「か、可愛いですよ、茜ちゃんは。素が美少女だから……」

「ん?カナミちゃんも可愛いよ、とても。高校時代にこんな可愛い子が二人して歩いていたら、男は迷わずに声かけちゃうでしょー。現に海大が声かけてるけどぉ!」

「ひーろーき!」

座席を回転させて向かい合わせに座っている私達は、お互いの表情が良く見える。ヒロ君は裕貴君にからかわれて、ほんのりと頬が赤いのだ。

「と、とにかく、茜ちゃんは潤兄が面倒見るからって東京に戻るのをOKされたんだって。……カナミちゃんって、通信制の高校に通ってたりする……?ごめん、偶然にも見ちゃったんだ、手紙……」

慌ててかき消す様にヒロ君は言った。私はチャンスだと思い、話す事を決意した。

「はい、私も高校を辞めてしまったので……通信制高校に通ってるんだ。いずれは大学にも通ってみたいな、っては思ってます……」

「……だったら、茜ちゃんも一緒に通っても良いかな?茜ちゃん、仙台では引きこもってしまって、行けなかったんだって。カナミちゃんも茜ちゃんも二人なら一緒に行けると思うんだ」

「はい、喜んで」

少しずつ、少しずつ、茜ちゃんとの日常を取り戻して行こう。

話をしながらの新幹線の車内、あっという間に東京まで到着してしまった。高校時代に行けなかった修学旅行みたいで楽しかったなぁ……。

いつの日か、茜ちゃんとも出かけたりしたいな。

「カナミちゃん、楽しかった!また遊んでね!マンガも楽しみにしてる!海大、またな!」

「裕貴君、有難うございました。またね」
「裕貴、お前、二人で会った時は覚悟してろよ!」

東京に到着し、裕貴君とは最寄り駅でお別れする。ヒロ君が放った言葉が良く理解出来ないけれど、裕貴君は「バーカッ!」と返していた。

すっかり夜になったが、昼間と変わらずに人手は多いし、仙台に比べると東京はより一層暑い。