バス停に着き、次の駅までのバスが20分後だと知る。

「住宅地の中だから、バス停にイスはないよなぁ。カナミちゃん疲れない?大丈夫?」

「大丈夫です……。それよりも……」

ヒロ君は何度も何度も誰かに電話をしていた。けれども繋がらないのか、はたまた相手が電話に出ないのか、会話は聞こえてこなかった。そんなヒロ君を見ているが、待っているだけの私達は何もしてあげられなかった。

「うん、俺も会わせてあげたかったよ。それが誰なのかは俺も知らないんだけどね……」

「え?……そうなんですか?」

「そうだよ、会うまでのお楽しみとか言われてるからね」

私達はバス停に居たが、少し離れた場所で電話をかけているヒロ君を待っている。寂しげな表情の中にも、段々と苛立ちを感じていそうに見える。しかし、何もしてあげられ無いから、もどかしい。

「……海大!」

遠くから聞こえてきた声に皆で反応する。どこかで聞いたような気がする声に、私は懐かしささえ感じた。

道路の先を見渡して小さく見える人影は、二人居るみたいだ。目を凝らして良く見てみると、どうやら、男性と女性が一人ずつ私達の方向に向かって来た。女性に合わせてゆっくりと歩いている。

「海大、待たせて悪かったな。何とか、間に合った……」

遠くから歩いて来た二人がバス停に到着すると、間近で見て驚いた。

まさかのまさか、会いたくても会えなかった人物が目の前に居た。私は言葉を発する前に感情が昂り、目から涙の粒が頬に流れてくる。

「ヒロ……君と……ミ、ヒロ……ちゃん……?」

目の前の女性が絞り出した声は、か細く消えてしまいそうだった。私は声を聞いた瞬間に一歩を前に出し、女性の元に向かい、ぎゅっと抱きしめた。

会いたかったよ、ずっと───……