───バスに乗り、着いた先は閑静な住宅街だった。ここに来た目的は何だろうか?もしかしたら、ヒロ君のお母さんが居るのかな?……などと自分なりに考えたりしてみた。

「二人に会わせたい人が居る。あそこの喫茶店で待ち合わせしてるんだけど……、来てくれたら良いな」

そこは映画で見たような、昔ながらの喫茶店だった。重い扉を開けるとカランコロン、とカウベルが鳴る。

「何名様ですか?」と店員が尋ねるとヒロ君が「5人の予定です」と言った。

"5人"と言う事は単純に考えて、2人で来ると言う事だ。もうすぐ12時になるから、次第に喫茶店の中は混み出してきた。

お腹も空いたとの事で昼食を取り、食後のドリンクとデザートが運ばれて来たが一向に待ち人は来ない。

「もう諦めようか……。でも、二人にどうしても会わせたいんだ。もう少しだけ待ってても良いかな?」

ヒロ君は元気が無さそうに囁いた。私達は何も言わずに、コクンと首を縦に振る。

ヒロ君の話では12時に待ち合わせをしたと言っていたのだけれども、時は既に13時半を過ぎていた。食後のドリンクとデザートで引き伸ばしていたが、ランチタイム終了の14時半を回ってしまい、会計を済ませて仕方なく外に出た。

ヒロ君はしょんぼりしていて、「随分と待たせたのに来なかった。二人共、ごめんな……」と寂しそうな背中を見せながら言った。

三人で、とぼとぼとバス停まで歩いている。ほとんど会話も無い。それでもヒロ君は私の手を繋ぐ事は忘れずに居てくれた。