「カナミちゃん……、俺も知ってたよ。ずっと言い出せなかったけど……。だから、こないだ漫画を見かけた時に何気に促してみたんだけどね」

ヒロ君にもバレていた。本屋さんで見かけた時、わざと促して来たんだ。けれども、私は曖昧にしてしまった。

………もう終わりだ。

鼻っから信じてなかったかもしれないけれど、わがまま令嬢の設定も必要無くなった。

ヒロ君にどう思われているのか知るのが怖いから、逃げ出したい。

「カナミちゃん、いや……奏心先生、いつも面白い漫画をありがとう。大好きで全巻持ってるのも本当だし、今度良かったら……サイン下さい!」

「本当に大好きだもんな、海大。最新作を読むためだけに漫画雑誌も買ってるしな。まさかの知り合いの可愛い女の子が描いてるとは驚きだった!」

ヒロ君と裕貴君は私の事を軽蔑する所か、私に褒め言葉を与えてくれる。拍子抜けした私は笑顔が溢れた。

漫画って凄いんだな。大好きな人にとってはストーリーが重要だから、描いている人がどうこうとか、関係ないんだ。私の頭の中が知られているみたいで恥ずかしいから、知り合いには知られたくない秘密だったのだけれども……知られたからこそ、引っ込み思案な私自身を思いっきりさらけ出せた気がする。

「あの……私の素性はバラさないで欲しいです……」

私は小さな声で二人にお願いをした。

「当たり前じゃん!」
「可愛い女の子が描いているだなんて、誰にも教えたくない!」

すぐに返答は返って来た。ヒロ君も裕貴君も親しみやすくて好きだなぁ。高校時代に二人に逢えていたら、また違った人生が歩めていたのだろうか……?