「カナミちゃん、泣きそうだけど大丈夫?」

「何とか大丈夫……でした」

カモメが全力でエビせんを食べに来るから驚いた。エビせんが全部なくなり、座席に座ると隣にヒロ君が座った。その隣に裕貴君が座った。

「ねぇねぇ、カナミちゃん。海大ってね、こう見えてゲーマーだし、漫画好きなんだよ」

「……っさいな、こないだ暴露したからカナミちゃんも知ってるから、二度も言わなくて良いんだよ!」

裕貴君がヒロ君を押し退けて、話しかけてくるので私は躊躇してしまった。裕貴君はとてもフレンドリーで私にもどんどん話しかけて来る。

「……今、ミヒロって言いました?」

「言ったよ。海が大きいって書いて、ミヒロだよ。……え?カナミちゃん、本名知らなかったの?」

対馬さんに履歴書を見せて貰えなかったので、ヒロ君の本名は知らなかった。裕貴君に教えて貰えて良かった。

私と同じ名前、"ミヒロ"……偶然にしても、漢字が違うにしても、同じ名前だなんて滅多にない。私は嬉しくて、頭の中がぽわぽわしている。

「伊野田 海大、18歳、大学一年だよ。バイトはカナミちゃんちとバーテンを掛け持ちしています!将来の夢は…公務員になっ、……っんー」

「裕貴!黙って聞いていればベラベラ喋って!」

ヒロ君の代わりに裕貴君が自己紹介をしてくれたが、ヒロ君に口を手を塞がれてモゴモゴしている。そのやり取りを見ては、心が暖かくなって微笑みが零れた。