行き先は東北の海辺。

新幹線に乗って、ワイワイと騒いでいる。私は皆が楽しそうに話しているのを見ているだけで幸せ。

「え?Wヒロとも、国立大なの?……そして、フリーなの?……え?もしかして、二人は出来てるとかじゃないよね?……ね?」

福島さんがWヒロ君に詰め寄る。裕貴君はヒロ君の同級生であり、親友らしい。

「俺がコイツと?有り得ないでしょ。女の子じゃなきゃ無理!」

裕貴君が笑いながら答える。

「爽やかなイケメンが二人も揃ってフリーとは有り得ない……。だったら、変な性癖があるとか……?」

「ないですってば!福島さんは疑い深いですねぇ……」

高校の時は行けないままに学校を辞めてしまったけれど、楽しくて修学旅行みたい。行けなかった分、神様が代わりに与えてくれた旅行なのかな?

私はとても楽しいけれど、向かい合わせにした座席で唯一つまらなそうにしていて、窓の外をぼんやりと眺めているフリをしている対馬さん。

明らかにムスッとしている。

ヒロ君から行き先を聞き出し、ホテルや新幹線の手配などを全てしてくれたのは対馬さんだ。

対馬さんはヒロ君が好きにはなれないらしいけれど、今日がチャンスだから打ち解けて欲しいと心から願う。