お嬢様だなんて、本当は嘘なんだよ。

私はいつまで騙し続ければ良いのだろう?

ヒロ君と会う回数が増える程、罪悪感に悩まされる。いっその事、本当の事を言えたら楽なのに……。

「全然、お嬢様じゃないんです。頭も良くないから、必死で勉強してやっと高校に入って……」

ヒロ君ならば、ありのままを受け入れてくれるかもしれない。そう思いながら自分の事を話してみようかな?と言葉を選びながらも話し出すとヒロ君は私の言葉を遮った。

「俺も頭が良くなかったから必死で勉強して、高校に入れたんだ。それまでは勉強とは縁が遠くて適当に過ごしてた。中三の後半なんて、柄にもなく塾も必死に行ってた。

でも頑張って良かったと思ってる」

ヒロ君は努力して高校に入ったんだな。明らかな勝ち組のヒロ君は私とは全然違う。

「人間、きっかけは誰にでもあるもんで、きっかけがあれば変われるって知った。……だから、今の俺が居る。

………こんなんでも、国立大学生だからね、俺」

「こ、く、りつ……」

言葉を飲みこんだ。きっかけがあったにしろ、国立大学まで入れたなんて素晴らしい。私が目標としていた場所にヒロ君は手が届いている。

きっかけは良くも悪くも、人生を左右するものだ。そして、人との繋がりもまた人生を左右してしまう。自分の力だけでは太刀打ち出来ずに、運命の歯車は回ってしまうものだ───……