ヒロ君が来てくれる日はメイクをバッチリしているし、洋服もなるべく可愛い物を選んで着ている。

いつでも外出は出来るが、問題は心の準備。

外出するとは思わなかった。

………ドキドキ。

そう言えば、ヒロ君と会ったあの日以外は買い物らしい買い物もしていない。大抵の物はネットから注文出来ていたし、不足品は近くのコンビニで買い足したり、対馬さんや福島さんが買ってきてくれたり。

短時間でも少しずつ慣らせば、以前の様に一人で買い物に出かけたり、美容室に出かけたり出来るだろうか?

「い、行きたい……です!」

「カナミちゃんはこの後は用事ある?買い物に行ったら食事の用意が遅くなってしまうから外食しませんか?」

「な、ないです!何っにもないです!」

ヒロ君と外食だ!緊張するけど、こんなチャンスは逃したくはない。

「……ヒロ君の洋服が乾くまで待ちましょう。流石にジャージは恥ずかしいですよね」

「……そうしてくれると嬉しいです」

ヒロ君は、はにかんで笑った。その顔がとても可愛らしくて、私も笑顔になる。

一緒に居ると世界が広がる。今まで怖がっていた世界に飛び出せる、そんな気がしている。対人恐怖症だけれど、ヒロ君は怖くない。

そう言えば、ヒロ君は誰かに似ている。

雰囲気とか、顔とか。誰だろう?

思い出そうとしたが、思い出せない。

封印している過去の中に隠されているのだろうか……?