高校の事には触れずに、ヒロ君に再びシャワーを浴びる事を勧める。シャワーを浴びたヒロ君の洋服をお急ぎモードで洗濯し、乾燥機にかけた。

対馬さんや福島さんも泊まり込みで手伝ってくれる時に浴室を使う為、自分なりに綺麗に掃除しておいたつもりだから貸す事には躊躇いはなかった。

「カナミちゃん、お言葉に甘えてシャワーを借りちゃってごめんね」

私のお気に入りのシャンプーとボディーソープに包まれたヒロ君からは、とても良い香りがしている。

「引越しした時に処分してしまったけれど、うちの高校のジャージはデザインも良いし、着やすかったよね。懐かしいなぁ……」

高校のジャージを着ているヒロ君はとても新鮮。時計の針がヒロ君の高校時代に戻ったみたいで嬉しかった。同じ出身校とは言い切れないのが寂しいけれど、高校時代を一緒に過ごしている様な感覚に陥っている。

「私もこのジャージは着やすくて、捨てられないんです……」

ジャージ姿のヒロ君もカッコイイ。こんなにカッコイイんだもん、高校時代もモテモテだったんだろうなぁ。

ヒロ君はきっと、男女共にモテモテで誰からも好かれていたのだと想像する。それに比べて私は……、嫌われていたから素性は晒せない。

ヒロ君のジャージ姿を見て浮かれていても、余計な事は何も言えないのだ。先生の話とか、してみたい話は沢山ある。……けれども、墓穴を掘らない為にも自分からは何も言わないのが得策である。