───ヒロ君は30分程、遅れて来た。

ヒロ君が来る少し前から夕立のような雨が降り出し、傘を差しても身体が濡れていた。

「良かったら、シャワー使います?濡れたままだと風邪をひいちゃうので……」

私はタオルを渡し、ヒロ君にシャワーを浴びるように言ったが、着替えがないからと断られた。それもそうだよなぁ……。

洋服はレディースサイズしか持ってはいない。ヒロ君が着れる洋服は何かないかな?

……乾燥機で服が乾くまでの間、着れるもの…と言えば……ヒロ君が風邪を引かないようにと必死で考える。

あ、アレだ。恥ずかしいけれど、アレしかない。アレならば男女兼用だから大丈夫だよね?

「こ、高校のジャージで申し訳ないんですけど……、男女兼用だから乾くまでの間、着てて下さい!」

ヒロ君をリビングで待たせたまま、クローゼットから取り出したのは高校時代のジャージだった。ジャージとはゆえ、チャック付きのトレーニングウェアに近いので、原稿に集中している引きこもり中は着ていたりする。着てるけれど、キチンと洗ってあるから大丈夫、……だとは思う。

高校時代は様々な出来事があったけれど、ジャージに罪は無いので捨てられなかった。投稿漫画もジャージを着て描いたりしていたので、愛着もある。