朝起きてから、必ずする事と言えば……

「よし、今日もあった!!」

机の引き出しを勢いよく開けて、通帳を確認する。

キュッと両手に包み込んで、胸に充てる。

大事な、大事な宝物。

お金が無くなったら、全ては…… “終わる”

確認を済ませてから、日の光が隙間から射し込んでいるカーテンに触れて、一気に開ける。

シャーッと言う軽快な音を出しながら、横滑り。

過去を封印した今は、カーテンも勢いよく開けられる程になった。

以前は、日の光も疎ましい程に朝が怖かったから―――……

「さてと、活動しますか……」

ボソリ、と一人呟いて、タオルを持って顔を洗いに行く。

顔を洗う前に鏡を見る。

“大丈夫、今日も素っぴんでも可愛い”
……と、自分に言い聞かせてから、洗顔フォームを顔に塗りたくる。

泡をクルクルと顔の上で滑らせ、水で流し、泡が落ちたら、モチモチの肌の感触を楽しむ。

化粧水をつけると、吸い付くように柔らかいモチモチ肌…自分の肌なのに堪らない。

―――そう、お金があれば何だって出来る。

人の心だって、手に入るかもしれない。

例えば、それが偽りだとしても… 夢を見せてくれるに違いない―――……