「黙祷(もくとう)」 三年前の夏の日と、同時刻。 防災スピーカーから響いてきた声に両手を合わせると、そっと目を閉じた私は心の中で語りかけた。 ねぇ、海斗。 元気ですか? もう、夏だね。 今いる場所も、蒸し暑いですか? 肌は灼けましたか? ブルーハワイのかき氷は食べた? 海斗、この町が見えていますか? 少しずつ戻っていく町並みの中、私はなんとか生きています。