――その花は、決して枯れないという。



 彼女の右目から花が咲いた。

 それはとても美しい花だった。冬の、透ける夜空のような澄んだ群青色で、形はデュランタという花によく似ていた。

 はじめてその花弁が彼女の右目からはらはらと零れ落ちたとき、僕はそれを彼女の涙だと思って慌てた。彼女は僕にとって、唯一の、とても大切な人だからだ。彼女が笑っていてくれることが、僕の何よりの幸せだからだ。

 そんな彼女の目には今、美しい花が咲いている。ベッドに横たわる彼女の右目に、毛細血管のようなか細い根をしっかりと張って、ゆるやかにしならせたみずみずしい茎の先に、美しい花を咲かせている。

 そしてその花は、一日一日、日を経るごとに輝きを増すのだ。彼女の命を糧にして。