筒入りポテチにクッキー、キャンディやキャラメル、醤油せんべい。

そんなたくさんのお菓子と、開けたら食べられる非常食のパック、薬や便利グッズの数々を、あたしはリュックから全部だして広げて見せた。


「すごいな……食い伸ばせばサルミまで余裕じゃないか。ラムネまであるのか!」
「飲んでいいよ。生ぬるいかもだけど、昇さん喜ぶかなと思って」
「喜ぶにきまってるだろう!懐かしいなぁ」


昇さんは23歳の男の人とは思えないほど無邪気に目を輝かせて言った。

あたしの持ち物をひとつひとつ手に取っては興味深く眺めてる。

だけど、そんな嬉しそうな昇さんに、告げなくちゃならないことがあるんだ。

そのために、あたしは来たんだから。


「昇さん、これからあたしが言うこと、よく聞いて欲しいの」
「日本は、負ける。そういう話か?」
「え!?どうしてそれを…」


あたしが言わないでいたそのことを、昇さんはいつにも増して冷静に言い放った。

もちろんそれはあたしがこれから話すことの最重要事項で、どの順番で話せばいいか、まだ迷っていたのに。


「輜重兵はな、要は運搬係だ。いろんなものを運ぶ。それにここに来てからは雑用はみなこっちの仕事だった。倉庫番に農場管理、海で食糧調達と、何でもやった。だから兵の数と物資、明らかに勘定が合わないのは最初から気付いてた」

「……」

「ゲニムでの補給がほとんどされなかったんだ。迷わずサルミに着けるとしてもまるで足らん。本土にコメがないのは軍需優先だからのはずだが、優先しておきながら足らないでは、一体コメはどこにあるんだ?この分じゃおそらく、サルミにも我々を養うだけの用意はないだろうよ」

「昇さん…」

「兵糧が尽きたら、このニューギニヤ島という籠城作戦で勝鬨をあげることは不可能だろう。そして本土も島だよな。つまりはそういうことだ」


昇さんは、薄々気付いていたんだ。

それなのにあたしたちの前ではそんなこと全然みせないで…


「…負けるよ。日本は。嘘ついてごめんなさい」

「俺たちをがっかりさせたくなかったんだろ。謝ることじゃない。で、いつ終わる?」

「昭和20年の8月……本土に、大きな爆弾が落ちて、それで終わるの」

「酷い終わり方だな…それでも未来じゃ仲良くやってるのか。全く理解できんな」


昇さんが呆れたように首を振った。

そうだよね、普通はそう思うよね。


「生き残ってみたら、わかるのかも」
「そんなものかな」
「うん。それでね、もうひとつ大事なお話があるの」


あたしは、この数日間で調べたことを、ひとつずつ、昇さんに話した。

サルミに行けないということも。