部室の椅子に腰掛け、シーちゃんに肩を抱かれたまま、涙を流しつづける。
 レオタードの膝の部分に、涙の雫が悲しい花を咲かせる。
「美幸は悪くねえよ。騙した奴が悪いんだ。美幸が泣くことねえって」とアッキーが
慰めの言葉を言う。
「そうじゃない。美幸は、自分の思いが届かないのが、悲しいんだよ」シーちゃんが
私の気持ちを代弁する。嗚呼、シーちゃんほど私の気持ちを理解している人は、他に
いない。
 私の肩にかかったシーちゃんの手を強く握る。
 シーちゃんが私の髪を優しく梳る。

「こいつだ。僕らを騙したのは」スマホを弄っていた陸くんが声を上げた。
 どれどれ、とアッキーが陸くんのスマホを覗き込む。
「ひでぇな、こいつ。最低のカス野郎だ」とアッキーが吐き捨てる。
 その言葉に私の涙が止まる。
 顔を上げ「私にも見せて」と陸くんに告げる。
「天野さんは、見ない方が良いよ」
「見たいの」
「でも……」
「お願い」
 私の言葉に、陸くんが渋々とスマホを渡してよこす。