私は空を飛びながら涙を我慢している。
 悔しくさと、切なさと、虚しさが、心の中で渦を巻いて、濁った塊になって、私の
涙腺を刺激する。
 心無い人の偽情報に惑わされ、大切な時間を空費した。
 偽りの救助に向かわなければ、本当に助けを求めていた人を救えたかもしれない。
 騙された事が悔しい。嘘を見抜けなかった自分が悔しい。
 そして何より、私の人の役に立ちたいという想いが、通じなかった事が悔しい。

「泣いてるの?」と陸くんが言った。
 涙を堪え、「泣いてない!」と強がってみせる。
「天野さんは何も悪くないよ」陸くんが、優しく声をかけてくる。
 その言葉で、涙が零れそうになる。
「泣いてなんかいない!」ともう一度強がってみせた。
 けれど、胸の内から滲み出た滴のために、私の視界はいつのまにか曇っていた。

 それから、15分ほど飛んで学校に帰り着いた。前が見えぬまま飛び続けて、よく
帰投できたものだと思う。
 着陸すると同時に、私は出迎えたシーちゃんの肩にすがって泣き出しだ。
 シーちゃんの顔を見たら、どうしても涙が止まらなくなった。
「ど、どうしたの?」とシーちゃんが驚くが、直ぐには答えられない。
「嘘の救助要請だったんだよ」と陸くんが代わりに応えてくれた。
 シーちゃんに抱きかかえられながら、AI部室に戻る。