あのね。と、私が男に詰め寄ろうするのを陸くんに押しとどめられた。
「関わるのは止そう。戻ろう」
 男は、そんな私達の様子も撮影し続けている。
 陸くんが私に背を向け、私の両手を自分の腰にあてがう。
「飛ぶ!」
 陸くんが叫ぶ。
 いつもの条件反射なのか、自分でも意図せず空中に飛び上がった。
 そのまま上昇を続ける。
 わざわざ『あの男』の元に戻る気になどなれない。
 私は陸くんに促されるまま、岐路についた。