「何か変だな」
 目的地に近づいたところで、陸くんが声を上げた。
「何が?」
「飼い犬が、獣の罠に嵌ったって話だけど、目的地近くなのに、まだ町中だ」
 たしかに鄙びた街並みではあるけれど、山の中ではない。こんな所に、獣など居る
のだろうか?
「あの辺りだ」
 陸くんが指さす先に学校らしき建物が見えた。
 校庭には雑草が伸び放題に生い茂り、校舎の窓ガラスは全て目張りがしてある。
 廃校なのだろうか。
 スピードを落として、慎重に近づくと、校庭の端で手を振る人物の姿が見えた。

 その人物の側に、ゆっくりと着地する。
 二十歳前後で、原色の派手な服装をしている。
 その青年が、スマホで私たちの様子を撮影しながら近づいてくる。
「おぉー。スゲー。マジっ。ホントに来やがった」
 と、のっけから嫌な言葉をかけてきた。
「あの。飼い犬が罠に嵌ったって話ですけど……」と問うと
「ああ、あそこ、あそこ」と青年が指をさす。
 そこには、旗を掲揚するポールが立っており、その先端部には籠のような物が括り
つけられていた。よく見ると、その籠から犬が顔を出している。