「例えばどんな?」
「まず、僕達の正体は秘密にするんだよね。顔は覆面で隠すとして、救助現場に着く
までの間、どうやって姿を隠すの? まさか現場まで歩いて行くはずないから、空を
飛んでくんだよね。毎回、この辺から飛び立ったら、直ぐに居場所がバレちゃうよ」
「なるほど、それは問題よね」
「それに、救助が必要な人はどうやって僕達に連絡するの? 僕達の正体を誰も知ら
ないのに、連絡のしようがないよね」
「たしかに、連絡手段は考えないとね」
「それから、一番のネックは僕達が学生だって事さ。普段は学校があるから、活動が
出来るのは放課後か休日だけ。助けを求めてる人に、放課後まで待ってとか、学校が
休みになるまで待ってとか言うつもり?」
「…………………」

「それに……、」
「待って、待って。陸くんが、いろいろ心配するのは分かるけど、やる前から、出来
ない事ばかり考えてたら前に進まない。出来ない理由じゃなくて、やれる方法を考え
よう」
 陸くんが問題点ばかりを口にするので、思わず反論してしまった。
 ここで、陸くんと険悪になったらまずいな。
 陸くんの力添え無しには、ソラシド・レスキューは活動出来ない。

「……」陸くんが、無言で固まっている。
「あの、陸くん」と声をかける。
 陸くんはひきつった笑顔を作り
「分かった。天野さんの言う通り、やれる方法を考えよう」と言ってくれた。
 ありがとう。と私が手を取ると、陸くんは顔を赤らめた。
 陸くんは、その火照りを吹き飛ばすように顔を激しく震わせる。
 朱の色が漸く収まったころ、陸くんが口を開く。
「でも、一つだけ言わせて。実際に救助活動に行く前に、予行演習はやろうよ。練習
無しで救助活動なんて危ないよ。助ける方も、助けられる方も危険だ」