「随分と、哲学的な質問だね」
 お父さんが、手に持っていた書類をテーブルの上に下ろし、私の目を見つめる。
 何故そんな質問を。などと、立ち入った事を聞いて来ない。私のお父さんはそんな
人だ。
 お父さんが私の目を見ながら考えている。きっと、私にも理解できる説明の言葉を
探しているんだろう。

「美幸は、宇宙からの地球の画像を、見たことある?」お父さんが話を切り出した。
「うん。ネットやテレビとかで」
「じゃぁ、これは見たことあるかな?」
 お父さんが、胸ポケットから取り出したスマホで、動画をテレビに飛ばす。
 テレビに映し出されたのは、宇宙からみた夜の地球の様子だった。
 どこの大陸だろうか。彼方此方にオレンジ色に輝く都市の灯りが煌めいている。
 ときには寄せ集まり、ときには疎らになり。都市と都市を繋ぐ光の、まるで真珠の
首飾りのように見えている。
「これは、国際宇宙ステーションからのライブ映像なんだ」
「綺麗だね。ずっと見ていても見飽きない」思わず感嘆の声を上げる。
「……」お父さんが、黙ったままで画面を見つめている。
 きっと、これから大事な事を言うんだ。
「今、夜の地球はこんなにも明るい。だが、百万年前、人類が生まれる前の地球は、
闇の世界だった。人類は、地球を照らす力を手に入れた。手に入れてしまった……、
そう言っても、良いかもしれない」
「……」
「人類は、地球の将来を左右する程の力を持った。その力をどう使うべきなのか?」