シーちゃん達と別れて10分ほど歩くと、我が家に着く。
「ただいまー」と玄関のドアを開ける。
 と、そこで私の目に、とびきり嬉しい物が飛び込んで来た。
 いつもは、そこに無い男性用の革靴だ。
「お父さん、帰ってるの?」
 玄関に鞄を投げだし、居間に走る。
 ドアを開くと、ソファーでくつろぐお父さんの姿があった。
 半年ぶりだろうか? 優しい笑顔が私を出迎える。
「お帰り。美幸」
「ただいま。あっ、えーと、お父さんも、お帰りなさい」

 すぐにでも抱き着きたい気持ちを抑え、落ち着いた素振りで応対する。
「いつ帰ったの? いつ迄居られるの? 今度は、ゆっくりしてられるんでしょ?」
 矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「それが、出張のついでに立ち寄ったんで、明日には発たなきゃ、いけないんだ」
「えーっ!? 明日」と言いながら、お父さんの隣に腰を降ろす。
「あら。美幸。帰ってたの? お帰りなさい」
「ただいまー」
 お母さんには、お座なりな返事を返して、お父さんに向き直る。
「ねぇねぇ。お父さん。一日くらい伸ばせないのぉ? 帰る予定」
「うーん。それは、ちょっとねぇ……」
「えぇー、やだぁー。いいじゃない。一日くらいー」
「わがまま言わないの、美幸。お父さん、忙しんだから」
「月ロケットの……お仕事?」
「ああ。年末にトリフネの打ち上げが控えているからね」
「もぉおー。今日しか居られないんならぁー……。えーい。甘えん坊攻撃だー」
 と言って、お父さんの腕に抱きついた。