「誰か?」陸くんがすかさず声をあげる。
「その“誰か”が問題。天野さん。君はこの力が恐ろしい力だとは思わないの?」
「恐ろしい?」
「そう。君の期待していない“誰か”は、こう考える筈さ『この力は兵器になる』」
「兵器?」
「なにしろ、手を触れずに物を動かせるんだからね。敵対する人を事故にみせかけ、
消し去るだって出来る」
「……」
「君の超能力を研究して、エスパーの軍隊が出来たとしたら、さぞかし世の中の役に
立つだろうね」
 辛辣な皮肉の刃が私を突き刺す。
 空気が固まる。
 六つの目が、陸くんに注がれる。

「とにかく。僕は超能力の事を公表するのには反対。もし、公表すると言うのなら、
僕は身を隠す。そうすれば、天野さんも超能力は使えなくなる」
 陸くんは、その言葉を残して、AI部の部室を出て行った。
 残された三人は、呆然とした面持ちで、陸くんの出て行ったドアを見つめていた。

 陸くんの懸念も分からないでは無いけれども、何故あそこまでネガティブになるの
だろう。私達が正しい心を持っていれば、力が悪用される事は無いと思うんだけど。
 陸くんが出ていってしまったために、私は胸に秘めたアイデアを、披露する機会を
失った。