暫く歩くと、森の先が明るくなってきた。
 船のような形をした、30メートルほどの遊具が垣間見える。
 あそこが目的地の海賊船に違いない。
 近づくと、海賊船のある空き地が、工事用のフェンスでグルリと囲まれている。
 遊歩道沿いに進み、行く手を阻むフェンスの前に至る。
 フェンスの高さは二メートル近くあり、簡単に飛び越えられそうもない。

 隙間から中を覗く、海賊船の前で不安そうに上方を見上げるシーちゃんがいた。
「シーちゃん。どうしたの?」と声をかける。
 私の声に気がついたシーちゃんが、泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「アッキーが、アッキーが。大変なの!!」
 柵越しにシーちゃんが、訴える。

「海東さん、落ち着いて。そっちへは、どうやって行けばいい」
 陸くんが冷静に対応する。
「あそこから入った」
 シーちゃんが指さす先には、無理矢理に動かしたのだろう、フェンスとフェンスの
間に隙間ができている場所がある。
 陸くんが、その隙間を素早く潜り抜ける。私も、それに続く。
 シーちゃんに導かれ、海賊船の真横に回る。
 見上げると、船のマストを模した物見台がある。アッキーはその物見台の手摺りに
乗り、不安定な姿勢で立っていた。
「アッキーが登ったら、梯子が落ちちゃったの。それに、床が腐って抜けて……」
 シーちゃんが事態を説明する。
 物見台の下には、千切れた金属製の梯子が、鋭い切断面を上にして立っている。
 床までの高さは三メートル程。飛び降りられない高さではないが、少しでも間違え
たら、千切れた梯子の上に落ちて串刺しだ。