―次は、森林公園前に停車しまーす―
 と車内放送が告げる。
 交差点を右折すると、『ようこそ、森林公園へ』と描かれた大きなアーチが見えて
きた。そのアーチを過ぎると、道が大きくカーブして、私達の目指す森林公園が姿を
現す。
「それじゃ、降りましょう」
 と言って席を立つ。それと、同時にバスにブレーキがかかった。
 私は、慣性の法則を身をもって体験することになり、バランスを崩した。
 すぐ隣に立っていた陸くんが、咄嗟に私の腕を掴んで支えてくれた。お陰で、私は
転ばずに済んだ。
 陸くんが、超能力実験に対して否定的な意見ばかりを言うので、陸くんに人嫌いの
印象を持っていた。でも、本当はそうでもないらしい。
 陸くんに掴まれた腕が熱い。
「あ、ありがとう」と、不器用にお礼の言葉を口にする。
 それに対して、陸くんは私の腕を放すと、無言のままでバスをおりていった。
 何だろう。「大丈夫だった?」 の一言でも言ってくれれば良いのに。
 陸くんに対する好感度メーターは、急上昇のあと急降下した。